毒素シンポジウム
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第53回毒素シンポジウム一般演題

O-1 デフェンシンファミリーの殺菌ペプチドhBD (human β-defensin)の好中球アポトーシスに及ぼす影響

○長岡 功1, 和田知樹1, 田村弘志2 (1順天堂大・医・生化学・生体防御学、 2生化学工業)

【目的】
好中球は感染防御や炎症反応において重要な働きをしているが、その寿命は短く、アポトーシスを起こす運命にある。生体内において好中球のアポトー シスは宿主あるいは細菌由来のさまざまな因子によって制御されており、例えば、Fasリガンド、活性酸素などは好中球のアポトーシスを誘導するが、LPS などの菌体成分、サイトカイン、増殖因子などは好中球のアポトーシスを抑制し、寿命を長くすることが知られている。我々は先に、Cathelicidin ファミリーの殺菌ペプチドCAP18/LL-37が、ホルミルペプチド受容体のFPRL1 (formyl-peptide receptor-like 1)やヌクレオチド受容体のP2X7に作用することによって好中球の自発的なアポトーシスを抑制することを明らかにした。そこで、本研究ではデフェンシンファミリーの殺菌ペプチドに好中球のアポトーシスを調節する作用があるかどうかについて検討した。

【結果】
ヒト末梢血好中球にhBD (human β-defensin)-1〜4を作用させたところ、hBD-4が好中球の自発的アポトーシスを強く抑制することがわかった。また、hBD-4はアポトー シスにともなうカスパーゼ-3の活性化を顕著に抑制することがわかった。さらに、hBD-4による好中球アポトーシスの抑制がケモカイン受容体CCR6に 対する中和抗体によって阻害されることがわかった。なお、CCR6のリガンドであるMIP-3αを好中球に作用させるとアポトーシスが抑制されることが確 認された。

【結論】
Cathelicidinやデフェンシンファミリーの殺菌ペプチドは殺菌作用によって生体を微生物感染から守るだけでなく、好中球のアポトーシスを抑制し、食細胞としての機能を維持させることによって自然免疫系において働いている可能性が考えられた。

O-2 クラミジアLPSと低密度リポタンパク質との相互作用の検討

○石井(堤) 裕子1、島田 和典2、代田 浩之2、Rudolf Toman3、長岡 功1 (1順天堂大・医・生化学・生体防御学、2順天堂大・医・循環器内科、3 Institute of Virology, Slovak Academy of Sciences)

 肺炎クラミジアは呼吸器感染症の起因菌として知られている他、慢性炎症を惹起することで動脈硬化の発症・進展にも関与することが示唆されているが、その 詳細はまだ不明な点が多い。我々は、多彩な生体反応を誘導する菌体成分のLPSについて着目し、クラミジアLPSの生物活性を検討しており、前回の報告 で、クラミジアLPSが大腸菌LPSと同様にヒト単核球にLBP依存的に結合し、炎症性サイトカインの産生を誘導するが、その活性は有意に低いことを示し た。さらに、クラミジアLPSの活性の低さはLBPおよびCD14分子に対する親和性の低さによる可能性を示唆した。
 今回は、動脈硬化の病態において重要な働きをしている低密度リポタンパク質(LDL)が血液中でLPSと結合することに注目し、クラミジアLPSとの相互作用について検討を加えた。
 まず、LDLへのクラミジアLPSの結合能をELISAで検討したところ、LBP非存在下でクラミジア LPSおよび大腸菌LPSのどちらも未変性LDLに対して強く結合した。しかし、酸化修飾を受けたLDLに対してはその結合能が著しく低下した。興味深い ことにLBPを添加すると酸化LDLへのクラミジアLPSの結合は増大したが、未変性LDLへのクラミジアLPSの結合は濃度依存的に抑制された。一方、 大腸菌LPSの場合はLBPを添加しても未変性LDLへの結合は変化しなかった。
 さらに、未変性LDLとクラミジアLPSの結合に対する大腸菌LPSの影響を検討したところ、大腸菌LPSを過剰量添加しても未変性LDLとクラミジア LPSの結合は変化しなかった。一方、未変性LDLと大腸菌LPSの結合は、クラミジアLPSによって濃度依存的に阻害された。  以上の結果より、クラミジアLPSとLDLの相互作用はLDLの酸化状態およびLBPの存在により変化すること、また大腸菌LPSとでは異なる可能性が示唆された。

O-3 STECの産生する新規AB サブユニット毒素の性状

○ 盛永 直子、八尋 錦之助、松浦 玄、野田 公俊 (千葉大院・病原分子制御学)

  Vero 細胞障害活性及びマウス致死活性を持つ新規 ABサブユニット毒素が報告された(Paton et al. J Exp Med, 200:35-46, 2004)。この毒素の遺伝子はVT産生株、特にVT2産生株に多く認められる、と報告されている。この毒素のVero細胞障害活性機構を解明していくこ とを目的として、STECをスクリーニングすることにより、VT2のみを産生しているSTEC 029株に新規ABサブユニット毒素の遺伝子が存在していることを見つけた。この遺伝子をpET23b(+)に組み込み大腸菌で、His tag蛋白として発現させ精製した(SubAB)。又同様にA及びBサブユニットもHis tag蛋白として作製した(SubA, SubB)。SubABは低濃度(>1 ng/ml)でVero細胞の増殖を抑制し、48時間で、底面から離脱したトリパンブルーによって染色される丸い細胞が出現した。又高濃度(>1 mg/ml)のSubABでVero細胞を処理すると、空胞を産生するという2つの活性を持っていた。この空胞活性はSubAにはなくSubB単独で起こ ること、低濃度での障害活性はSubABによる蛋白合成阻害活性によって起こること、蛋白合成阻害活性にはSubAの272番目のセリンとSubBに依存 することが分かった。 SubAはsubtilase-like serine proteaseであると報告されている。272番目のセリンはserine proteaseの活性中心である触媒3つ組残基 (Ser, His , Asp)の一つであると考えられている。しかし、アゾカゼインや2、3の人工ペプチドを分解するか調べたが、これらはSubABの基質にはならないことか ら、基質特異性が非常に高いか、または別の活性を持っているのかもしれない。以上のSubABの諸性状について報告する。

O-4 CD59認識特性を持つコレステロール依存性細胞溶解毒素

○長宗 秀明1、福島 江1、篠原 由樹1、田端 厚之1、友安 俊文1、大倉 一人2、大国寿士3 (1徳島大院・ソシオテクノサイエンス・ライフシステム、2名大院・生命農、3メデカジャパンラボラトリー・総合研)

 ヒト特異的な膜孔形成毒素インターメディリシン(ILY)は、ストレプトリシンO等に代表されるコレステロール依存性細胞溶解毒素(CDC)遺伝子ファミ リーに属する。しかしコレステロールとは直接結合しない点で通常のCDCと異なる細胞認識機構を持つ毒素である。また川崎病児から分離されたS. mitis株に由来するヒト血小板凝集因子(Sm-hPAF)もCDCファミリーに属し、ILYのような厳密なヒト特異性は示さないがやはり膜孔形成活性 を示し、ILYと最も相同性が高くかつILYと同じ受容体を認識する可能性が本シンポジウムでも報告された毒素である。近年、ILYは細胞膜タンパクであ るヒト型CD59(hCD59)を認識し、活性を発揮することが報告された。そこでSm-hPAFについてもILYと同じくCD59を認識して作用するの か、またその認識機構はILYと同じなのか否かについて両者の比較検討を行った。
 hCD59を発現するラット肝細胞BRL3A-hCD59を調製し、親細胞BRL3A及びヒト肝癌細胞HepG2とともに、ILY及びSm-hPAFの 細胞障害作用に対する感受性を検討した。その結果、BRL3AはILYに全く感受性を示さなかったが、BRL3A-hCD59はHepG2より低いものの ILYに対して高い感受性を示した。一方Sm-hPAFはBRL3AでもHepG2でも細胞障害性を示したが、後者の方が前者よりも10倍ILY感受性が 高かった。BRL3A-hCD59はSm-hPAFに対してHepG2と同等の高感受性を示した。次に、methyl-b-cyclodextrin(M b CD)によるコレステロール(CHL)除去操作を施したヒト赤血球に対するILY及びSm-hPAFの溶血作用を観察したところ、ILYはCHL除去処理 した赤血球に対してほとんど結合性も溶血活性も示さなかった。Sm-hPAFの場合でもILYと同様であった。これらの結果から、ILYはhCD59に特 異的であり、Sm-hPAFは他の動物のホモローグも認識できるという違いはあるものの、両毒素ともにCHL存在下(恐らくラフト中)で形成される CD59を構成成分とした受容体構造を認識していることが示唆された。さらに詳細な認識機構は現在検討中である。

O-5 マムシ毒に含まれるアミノペプチダーゼの性状解析とcDNAクローニング

○小川 裕子1,村山 信浩2、藤田 吉明2、大原 裕美1、加藤 絢1、矢ノ下 良平1 (1星薬大・医薬研, 2昭和大・薬)

【目的】
タンビマムシ(Gloydius blomhoffi brevicaudus)毒とニホンマムシ(Gloydius blomhoffi)毒にジペプチジルアミノペプチダーゼIV(DPP IV)とアミノペプチダーゼA(APA)が存在することを見い出し、それらの性状解析およびcDNA クローニングからその全一次構造を決定したので報告する。

【方法】
アミノペプチダーゼ活性はGly-Pro-MCA、Asp-MCA、Ala-MCA、Arg-MCAを基質として、遊離した7-amino-4- methyl-coumarin の蛍光強度により求めた。ゲルろ過クロマトグラフィーはSephacryl S-300を用いて行った。ゲルろ過クロマトグラフィーによって得られたvoid 画分をSDS-PAGE によって分離後、各バンドについてon membrane digestion 法により、部分アミノ酸配列を調べた。既知のDPP IVおよびAPAのアミノ酸配列の保存領域からプライマーを作成し、タンビマムシ毒腺由来のcDNAライブラリーからPCRを行った。得られたPCR産物 をプローブとして、タンビマムシ毒腺由来のcDNAライブラリーのスクリーニングを行った。

【結果と考察】
タンビマムシ毒の凍結乾燥品をゲルろ過クロマトグラフィーで分画したところ、void画分にGly-Pro-MCAおよびAsp-MCAの 分解活性が検出された。void 画分を20万gで超遠心して活性を調べたところ、約50%が沈澱に回収された。void 画分をSDS-PAGEで調べたところ、分子量170 kDa、116 kDa、74 kDaの3つの主要なバンドが検出され、いずれも糖タンパクであった。そのうち170 kDaのバンドから得られた部分アミノ酸配列は、既知のAPAに相同性を示した。また、116 kDa のバンドは、既知のDPP IV の配列と相同性を示した。そこで、既知のAPAとDPPIVのアミノ酸配列と塩基配列の情報を基にcDNAライブリーをスクリーニングした結果、それぞれ 陽性クローンが得られ、タンビマムシ由来のAPAとDPPIVの全一次構造を決定した。精製DPP IVのN末端アミノ酸配列は、膜貫通ドメイン(シグナルペプチド)と一致していた。

【結論】
ヘビ毒由来のAPAとDPP IVの全一次構造を初めて決定した。これらのタンパクは膜結合の状態でヘビ毒中で存在することが示唆された。

O-6 志賀様毒素の分泌機構の解析

○清水 健1,2、川上 怜美2、濱端 崇3、太田 敏子2、野田 公俊1 (1千葉大院・病原分子制御学、2筑波大院・感染生物学、3国立国際医療センター研)

腸管出血性大腸菌(EHEC)は主要な病原因子として志賀様毒素を産生する。志賀様毒素には志賀様毒素1(Stx1)と志賀様毒素2(Stx2)が存在 し、アミノ酸レベルで56%の相同性が存在する。しかしながら、Stx1とStx2では分泌様式が異なっていることが知られており、Stx1の毒素活性の ほとんどが菌体内に存在しているが、Stx2では培養上清に存在することが報告されている。さらに、これらの毒素活性の分布にはBサブユニットの種類に よって決まっていることも報告されている。Stx2の特異的な分泌機構の仕組みは未だ明らかになっていないが、おそらくStx2のBサブユニットに EHECでの分泌に必要となるモチーフが存在することが考えられる。そこで我々はEHECでのStx2の分泌機構の解析を進めるために、C末端にHis Tagを付加したStx1のBサブユニット(Stx1BH)、あるいはStx2のBサブユニット(Stx2BH)を低いレベルでEHECに発現させた菌体 でのStxBHsとStxsの分布を解析した。その結果、発現していたStx1BHとStx2BHはどちらも分泌されていなかった。しかしながら、 Stx2BHを発現させたEHECではStx2の分泌の制御が失われていた。一方、Stx1BHを発現させたEHECではそのようなことは起こらなかっ た。これらの結果はStx2BHが特異的にEHECのStx2分泌システムの制を解除していることを示しており、おそらくStx2BHがEHECに存在す るStx2分泌装置の制御分子に特異的に結合しているためだと思われる。そこで、Stx2分泌装置が認識するStx2のBサブユニットの領域を特定するた めに、Stx1BHとStx2BHのキメラBサブユニットを作成し、解析を行った。その結果、Stx2BHのSer-32をStx1BHのそれに相当する Asnへの置換によってこのBサブユニットを発現していたEHECにおけるStx2の分泌の制御が回復した。このことより、Stx2の分泌にはBサブユ ニットのSer-32が重要であることが示唆された。

O-7 ボツリヌスB型赤血球凝集素を構成するサブコンポーネントの性状解析

○有満 秀幸1、重盛 尚子1、越智 定幸1、辻 孝雄1、阪口 義彦2、李 在哲2、小熊 惠二2 (1藤田保健衛生大・医・微生物、2岡山大・医・病原細菌)

ボツリヌス菌が産生するProgenitor toxinは、神経毒素(NTX)に赤血球凝集素(HA)とこの活性を持たない無毒蛋白(NTNH)が会合した16S毒素(A〜D,G型菌)、NTXと NTNHで構成される12S毒素(A?F型菌)、16S毒素2分子が会合した19S毒素(A型菌)が存在する。19Sと16S毒素は赤血球凝集活性を持 ち、NTX単独や12S毒素と比較すると消化管酵素に対する安定性が高いだけでなく、小腸上皮に結合しやすいことがA型とC型毒素では既に報告されてお り、HAが毒素の効率よい吸収に関係していることが推察されている。HAはHA1、HA2、HA3の3つのサブコンポーネントが会合して構成される分子で あるが、これらは緩和な条件での完全分離・精製が困難であることから、HAの赤血球凝集活性や酵素に対する抵抗性に関係するサブコンポーネントの同定には 至っていない。このことから各HAサブコンポーネントをGST融合蛋白として発現させ、GSTを切断除去した標品を用いてこれらの解析を試みた。
まずトリプシンに対する感受性ではHA2は非常に不安定であったが、HA1はN末端側の数残基の欠失、HA3もトリプシン特異的な部位でニックが入り、 HA3aとHA3bフラグメントを生じた以外は高濃度のトリプシンに対しても高い抵抗性を示し、N末端アミノ酸解析での配列もNativeの16S毒素と 同一であった。HA1の反応はTPCK処理トリプシンでは認められず、混在していたキモトリプシン様酵素による反応であると考えられたことから、HAは HA1とHA3がHA2を覆うように会合してHAを構成後、NTXと同様菌体内のトリプシン様及びキモトリプシン様酵素による攻撃を受けるが、高い安定性 を維持して神経毒素を保護すると考えられた。
また赤血球に対する結合性はHA1とHA3に見られたが、血球をノイラミニダーゼ処理するとHA3の結合性だけが消失した。また赤血球の凝集活性はHA3 のみ認められたが、この活性はノイラミニダーゼ処理血球に対しては認められなかったことから、HAの持つ赤血球凝集活性にシアル酸を認識するHA3が大き く関与している可能性が考えられた。現在、モルモット小腸への結合に関わる分子を解析中であり、これらの結果も含めて、HAサブコンポーネントの生物学的 機能に関して得られた結果を報告したい。

O-8 Neutralizing effect of chicken egg yolk immunoglobulin (IgY) against Shiga toxins

○Paola Neri 1, Ryo Kobayashi 1, Kouji Umeda 2, Tsuyoshi Sugiyama 1, Takao Tsuji 3, Yoshikatsu Kodama 2, Hiroshi Mori 1 (1 Gifu Pharm.Univ. 2 Ghen Corp. 3 Fujita Health Univ.)

Shiga toxin (Stx) is involved in the development of severe systemic complications following enterohemorrhagic E. coli (EHEC) infection. The use of antibiotics for the treatment of EHEC infection is limited largely because of a possibility for antibiotics to increase Stx release. There are still no effective therapeutic agents available for Stx-mediated diseases. In this study, we prepared polyclonal antibodies from egg yolk (IgY) of chickens immunized with Stx-1 and Stx-2, respectively, and characterized the neutralizing activity of the antibodies. These antibodies can be expected to neutralize and/or eliminate free Stx in the intestine by oral administration.
Anti Stx-1 IgY and anti Stx-2 IgY completely neutralized the cytotoxicity of Stx-1 and Stx-2, respectively, at a concentration of 10 μg/ml in HeLa cell cytotoxicity assay. The antibodies did not show any cross-neutralizing activity against the opposite Stx each other, nevertheless they showed strong cross-binding activities in ELISA and immunoblotting assay. The neutralizing activities of anti Stx-1 IgY and anti Stx-2 IgY were suppressed by mixing with the corresponding recombinant Stx-1 and Stx-2 B subunits performed by using crude Stx-1 and Stx-2 B subunits (gifts from Prof. Y. Yasuda, Aichi Gakuin Univ.) as well as purified Stx-1 and Stx-2 B subunits with His-tag. These results suggested that the antibodies to B subunits contributed to neutralizing Stxs, but those against A subunits did not. Anti Stx-1 IgY and anti Stx-2 IgY rescued mice from the death caused by intraperitoneal injection with lethal dose of Stx-1 and Stx-2, respectively.

O-9 スリランカに棲息するコブラの毒素成分の解析―インドコブラ(Naja naja)との比較―

Ranashinghe,J.G.S.2、浅野 正司1、林 郁浩1、鈴木 美恵子1、Athauda,S.B.P.2、○森山 昭彦1 (1名古屋市大・院システム自然科学、2ペラデニヤ大学・医)

スリランカは毒ヘビ咬傷による死亡率の最も高い国の一つである(死亡率:5.7人/10万人、600人/年)。主要な毒ヘビはコブラであり、コブラ咬傷治 療にはインドで製造されたAVSが用いられている。しかし、スリランカではAVSの治療効果がインドに較べて弱いという報告もある。
他方、スリランカに棲息するコブラは、現在はインド亜大陸に棲息するインドコブラ(Naja naja)と同種とされているが、形態的に 異なる点もあり、かつては別種に分類されていた時期もある。スリランカとインドに棲息するコブラでその毒素タンパク質の抗原性が異なるとすれば、スリラン カのコブラに対するAVSを作成する必要が生じる。これを明らかにする目的で、スリランカのコブラの毒素から多成分の毒素を単離し、インドのコブラとの異 同について検討した。 古典的方法であるが、イオン交換クロマトグラフィーと逆相クロマトグラフィーを併用し、各成分を分離後、質量とアミノ末端からの部分アミノ酸配列を決定した。各成分は、一次構造の類似性から、サイトトキシン10種、ホスホリパーゼA2(PLA2)7種、ナトリン2種、ムスカリニックトキシン様タンパク(MTLP)2種、神経成長因子(NGF)、トロンビン様セリンプロテアーゼと同定された。サイトトキシン10種のうち5種は新しい配列であり、インドコブラの毒素との違いが明らかとなった。PLA2は7種単離されたが、部分アミノ酸配列から2グループに分類され、アミノ末端付近の部分アミノ酸配列だけでは、新しい一次構造は1種類だけであった。MLTPはNaja najaでは初めての報告であり、Naja atra, Naja kauthiaの配列とは異なることが示唆された。NGFとナトリンはともに、Naja najaでは初めての発見であるが、決定した部分アミノ酸配列(〜30aa)はNajaの他の種で既に報告されている配列と100%一致していた。トロンビン様セリンプロテアーゼはコブラ毒素として初めての発見である。結論:新たに発見された成分の毒性については不明であるが、主要な毒素成分についてはインドのコブラのそれとは異なる可能性が示唆された。

O-10 H. pylori VacAによるシクロオキシゲナーゼ-2 (COX-2)発現誘導

○久恒 順三1、和田 昭裕1、山崎 栄樹1、西 義人1、片方 陽太郎2、平山 壽哉1 (1長崎大・熱研・病原因子、2弘大・農学生命科学)

[目的]
H. pyloriが産生する空胞化致死毒素(VacA)は標的細胞に空胞を形成し、死滅させる。我々は、VacAがp38MAP kinase及びErk1/2を活性化し、さらにこのp38の活性化が転写因子であるATF-2の活性化を引き起すことを明らかにした。そこで、p38の 活性化を介して発現することが知られ且つ炎症などの生体反応に重要な関わりを持つシクロオキシゲナーゼ-2 (COX-2) の発現に及ぼすVacAの影響を究明した。

[方法]
VacAのCOX-2 mRNA産生に及ぼす影響;ヒト胃癌上皮由来株化細胞AZ-521細胞にVacAを種々の時間、あるいは、種々の濃度で処理し、細胞からtotal RNAを抽出してOligo-dT及びCOX-2 primerを用いて、RT-PCR及びリアルタイム-PCRにて解析した。転写活性亢進とCOX-2プロモーター領域の解析; COX-2 プロモーター遺伝子を挿入したplasmid、または、変異plasmidを細胞にtransfectionし、VacAを処理して、ルシフェラーゼ活性 を測定した。VacAのCOX-2産生誘導に及ぼす各種阻害剤の影響; p38の阻害剤SB203580、Erk1/2の上流であるMEK1/2の阻害剤PD98059で細胞を前処理し、VacAを作用させてCOX-2 mRNAの産生に及ぼす影響を解析した。

[結果及び考察]
VacA処理により空胞活性とは無関係にCOX-2 mRNAが時間及び濃度依存的に産生が誘導された。このCOX-2 mRNAの発現誘導は、主にp38シグナル伝達系を介していた。VacA処理により転写活性が顕著に増加したが、ATF-2の結合領域を変異させたCRM では著しく減少した。しかし、NF-kBまたはNF-IL6の結合部位の変異では有意な低下は認められなかった。従って、VacAによりp38MAP kinase/ATF-2 cascadeが活性化され、COX-2の発現及びPG類の合成が亢進することが判明した。この機序が本菌による胃炎・胃潰瘍の発症と増悪に関与すること が考えられた。

O-11 ウエルシュ菌β毒素の致死作用発現機構の解析

○ 永浜 政博、金藤 博亮、小林 敬子、櫻井 純 (徳島文理大・薬・微生物)

C型ウエルシュ菌の産生するβ毒素は、分子量34,681のタンパク毒素で、本菌による壊疽性腸炎の原因毒素であり、致死や壊死等の生物活性を有してい る。我々は、β毒素がヒト急性前骨髄性白血病細胞由来のHL-60細胞の細胞膜ラフト上でオリゴマーを形成して、膨化を引き起こすことを明らかにした。そ こで、今回、β毒素の免疫系に対する作用との致死活性の作用発現機構を解析した。
 β毒素は、HL-60細胞を含め種々の血球系細胞に作用し、サイトカイン遊離を誘導することから、毒素は、in vivoにおいてもサイトカインを誘導して致死作用を示す可能性が考えられる。そこで、毒素をマウスに投与後、血中のサイトカイン量を測定すると、毒素投 与約1時後から血中TNF-αが上昇、さらに、b毒素による致死活性は、抗TNF-α抗体の前投与によって有意に抑制された。従って、本毒素による致死作 用とTNF-αの関係は、リポポリサッカライド(LPS)をマウスに投与した場合と類似していることが推察される。そこで、細胞質内ドメインの点変異のた め受容体としての機能は示さないToll-like receptor4(TLR4)を有するC3H/HeJ (LPS不応答性マウス)と、そのコントロールマウスであるC3H/HeNを用い、本毒素による致死活性を検討した。その結果、C3H/HeJは、C3H /HeNと比較して、本毒素による致死時間が有意に長いことが判明した。そこで、毒素作用発現にTLR4の関与が考えられるため、C3H/HeJとC3H /HeNから腹腔マクロファージ(Mφ)を単離し、毒素によるTNF-α遊離を検討した。その結果、b毒素は、C3H/HeJ MφからTNF-αの遊離を全く誘導しないが、C3H/HeN Mφからは、TNF-α遊離を誘導した。さらに、この遊離は、抗TLR4抗体処理により阻害されたが、抗TLR2抗体では阻害されなかった。次に、 C3H/HeJとC3H/HeN Mφに対する本毒素の結合を32Pラベルb毒素を用い検討したところ、両者における結合の相違は、ほとんど認められなかった。次に、LPSは、CD14と 複合体を形成してTLR4に結合することが知られているので、b毒素によるTNF-α遊離に対する抗CD14抗体の効果を検討したところ、この抗体による TNF-α遊離は、全く影響されなかった。従って、本毒素は、TLR4に直接結合してTNF-α遊離を惹起すると推察される。すなわち、β毒素は、 TLR4に作用してTNF-α遊離を促進し、致死作用を示すと考えられる。

O-12 腸炎ビブリオO3リポ多糖の糖鎖構造と腸炎ビブリオリポ多糖におけるシアル酸誘導体の分布

○一色 恭徳、近藤 誠一 (城西大・薬)

 近年、腸炎ビブリオ感染症は東南アジアを中心として世界的規模で拡大している。また、その分離菌株は特定の表層抗原(O3:K6、O1:KUTおよび O4:K68)を持ち、さらに、同一遺伝子型を示すことを特徴としている。前回の本シンポジウムでは、もっとも分離頻度の高い腸炎ビブリオO3:K6株の リポ多糖(LPS)の糖鎖構造を解析し、同LPSが新規のシアル酸様糖質5,7,8-triamino-3,5,7,8,9-pentadeoxy- nonulosonic acid(NonA)を有することを報告した。そこで、今回、NonAの局在を含めた腸炎ビブリオO3 LPSの全糖鎖構造を解析したので報告する。また、これまで行ってきた腸炎ビブリオLPSの糖鎖構造解析から、O2およびO2と共通抗原性を示すO- untypeable株LPSがNonAとは異なるシアル酸様糖質を持つことが明らかとなっている。また、これらの糖質は、菌株のO抗原特異性と密接に関 係していることが示唆されている。そこで、本菌の全O抗原型LPSについてシアル酸様糖質の有無を解析して、同糖質の腸炎ビブリオO抗原における分布について検討する。
 腸炎ビブリオO3:K6株LPSを脱リン酸、脱アシル化したLPS全糖鎖のPyridylamino化ラベル体を調製し、逆相HPLCで精製後FAB- MSとNMRで解析した。その結果、腸炎ビブリオO3 LPSの糖鎖は、1分子のNonA、Glucuronic acidおよびKdoと、2分子のGlucose、Galactose、L-glycero-D-manno-heptoseにリピドAバックボーンの Glucosamine2糖を加えた11糖で構成されていた。また、NonAの5および7位のアミノ基はN-アセチル化され、8位のそれは遊離型として存 在することが示唆された。以上のように、腸炎ビブリオO3:K6株のLPSは、極めて特徴的な糖鎖構造を有していた。一方、O2抗原型と共通抗原を有する O5およびO11抗原型、さらには、O3血清型と共通抗原を有するO13抗原型菌株のLPSをメタノリシスし、全アセチルメチルケトシド誘導体として GLCで分析した。その結果、前者からはO2 LPSの持つシアル酸様糖質と同一の、また、後者からはNonAと同一の保持時間を有するピークが検出された。従って、シアル酸様糖質が腸炎ビブリオ LPSの糖鎖構成糖質として広く分布している可能性が示唆された。本シンポジウムでは、腸炎ビブリオLPSのもつシアル酸様糖質と同菌のO抗原構造との関 係についてさらに詳細な解析を進め発表する予定である。

O-13 コレラ菌溶血毒を用いたナノ基板の創成とその応用

○生貝 初1,舟橋 伸昭1,中山 浩伸1,飯村 兼一2,中出 聡美2,加藤 貞二2,今井 茂雄3,山本 則幸4,杉本 茂5, 山本 幸一6,八代 敏晴7,城戸 勝治8,和田 邦身9,川合 晶子10,林 進11,松岡 英明12,高麗寛紀13 (1鈴鹿高専,2宇都宮大,3 INAX,4東亞合成,5日食分析,6石塚硝子,7富士ケミカル,8ヘキサケミカル,9カケン,10 NITE,11抗技協,12東京農工大,13徳島大)

【目的】
我々はシリコン(Si)ウエハ基板表面にコレステロール(Chol)に親和性のあるコレラ菌溶血毒(VCH)を結合させて抗菌加工製品の抗菌力を 測定するコントロールサンプルの開発を進めている。ここでは,Siウエハ基板上でVCHの構築を制御する方法やその分析結果について報告する。

【方法】
基板に結合させるVCHはChol結合活性は保持するが毒性のないpro-VCHを大腸菌に大量に発現させて調製した。コントロールサンプルは, フェニルトリクロロシラン(PhTCS)を化学吸着させたシリコン(Si)ウエハ上に,Cholの展開単分子膜を移行し,pro-VCHを結合させた後, 電気分解銀イオン溶液または硝酸銀溶液中に浸して作製した。抗菌力はJIS Z 2801にもとづいて評価した。基板の微細構造は,原子間力顕微鏡と走査型電子顕微鏡を用いて分析した。また,基板表面に存在する銀の存在や結合様式を調 べるために,SPring-8のBL39XUを用いてAg-K吸収端におけるXAFS測定を全反射法によって行った。

【結果】
pro-VCHは成熟型VCHと同様にCholのA環3位のOHとB環の2重結合を認識してCholに結合する。そこでChol展開単分子膜の疎 水基側をSiウエハ上のPhTCSのフェニル基に接するようにChol単分子膜を移行し,CholのOH(親水基)を大気相側へ配向させた基板を作製し た。この基板をpro-VCHと銀イオン溶液で順に処理すると,表面上に垂直に林立した柱状の構造体が多数観察された。柱状の構造体はpro-VCHで処 理した基板にのみ観察されたので,PhTCSとCholを介して結合したpro-VCHと考えられた。このコントロールサンプルは約1.4の抗菌活性値を 示した。また,コントロールサンプル上に銀の存在を示す証拠となるXAFSスペクトルが得られた。EXAFS領域の振動構造解析から,銀は主にAg0およびAg+と して基板上に吸着されていることが分かった。銀の吸着量と価数は,基板の作製条件に依存して変化し,銀溶液濃度の低い方が銀の吸着量は減少したが,一価の 銀の割合は増加する傾向にあった。今回得られた結果は,基板上の銀の吸着量や結合様式を詳細に検討することによって,最適なコントロールサンプルが作製で きることを示した。なお,本研究は平成16年において(独)製品評価技術基盤機構の“試験事業者認定事業開発業務に係る調査研究業務”として抗菌製品技術 協議会が委託された成果の一部である。