毒素シンポジウム
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第56回毒素シンポジウム若手奨励演題

Y-1 C型とD型ボツリヌスC2毒素遺伝子をコードするプラスミドの解析

要旨
C型とD型ボツリヌス菌が産生するC2毒素 (C2) は、C2IとC2IIからなる2成分毒素で、両者の共存下で生物活性を示す。我々は、C2遺伝子の由来を明らかにすることを目的として、C型無毒株, (C)-203U28のC2毒素遺伝子をコードするプラスミド(pC2C203U28)のゲノム解析を行い、本ゲノムの様々な特徴を明らかにしたので報告 する。
 pC2C203U28の全塩基配列は、106,981bpの環状2本鎖DNAで、GC含量は26.7%であった。本プラスミド上には、C2を含む123 個のタンパク質をコードする領域(ORF)が同定されたが、tRNA遺伝子は存在していなかった。また、核酸代謝に関与する多数の遺伝子が存在し、その並 びが保存されていた。さらに、3つのRNA polymerase ?因子が存在し、いずれも?70ファミリーのextracytoplasmic function(ECF)?因子のグループに属していた。一方、本プラスミド上には、新しいタイプのinsertion sequence (IS)とその残骸が存在し、ISとしての構造を確定することができた。
 他のC型(C-Stockholm株とC-468株)とD型菌(D-1873株)について、プラスミドC2上の各遺伝子が保存されているかを調べるた め、PCRスキャニング解析を行った。C型とD型菌ともC2遺伝子を含む下流領域(70kb)においては、ほとんどの遺伝子が保存されていたが、C2遺伝 子の上流領域(35kb)では、C型菌のみ保存されていない遺伝子が多かった。そこで、C型とD型菌のプラスミドC2のゲノム構造を比較するため、その上 流領域の塩基配列の決定を行なった。C型とD型菌とも、非常にゲノム構造のバリエーションが認められた。その結果についても報告する予定である。

Y-2 上皮細胞バリア破壊因子ボツリヌスHAのサブユニット機能解析

<研究の目的>
ボツリヌス毒素(150kDa、血清型A〜G型)はメタロプロテアーゼ活性を有する神経毒素であり、常に無毒成分と会合した複合体として産生される。無毒 成分には、赤血球凝集活性を示すHAと、赤血球凝集活性を示さないNTNHがある。ボツリヌス食中毒の発症例は、ヒトでは主としてA、B、E(稀にF)型 毒素で、家畜や家禽では主としてC、D型毒素で報告されている。また、食中毒の発症には、経口摂取された神経毒素が腸管から吸収され、血中に移行する過程 が必須である。我々は、B型神経毒素複合体中のHAが、上皮細胞バリアの一つである細胞間バリアを破壊し、神経毒素の腸管上皮細胞バリア通過を促進するこ とを明らかにした(第54、55回毒素シンポジウム)。そこで本研究では、B型HAが腸管上皮細胞間バリアを破壊するメカニズムをより詳細に解析すること を目的とし、HAを構成する異なる3つのサブユニット(HA1、2、3)の組換えタンパク質(rHA1、2、3)を用いてrHAを再構成し、各サブユニッ トが上皮細胞間バリア破壊に果たす役割を解析した。

<方法、結果及び考察>
B型rHAサブユニットの精製標品を用いてrHAを再構成し、ゲルろ過法並びにSDS-PAGEにより解析した。この結果、rHAが、rHA1、2、3か ら成るヘテロオリゴマーとして再構成していることを確認した。次に、個々のサブユニットの有する細胞間バリア破壊活性を、Caco-2細胞の TER(transepithelial electrical resistance)測定により解析した。この結果、各成分単独では細胞間バリア破壊活性は確認されないが、3つのサブユニットが再構成したrHAによ りバリアが破壊されることが明らかになった。
以上の結果から、B型HAを構成する3つのサブユニットが協調的に働くことにより、上皮細胞間バリアが破壊されることが示唆された。各サブユニットの詳細な機能解析並びにrHA3のX線結晶構造解析についても併せて報告したい。

Y-3 ボツリヌス神経毒素重鎖C末端領域の脂質受容体に対する結合活性

ボツリヌス菌が産生する神経毒素(BoNT)は約50 kDaの軽鎖と約100 kDaの重鎖から構成されており、重鎖C末端領域(HC)が受容体結合を担う。BoNTが神経終末に作用する際に結合する受容体は毒素型により異なり、C 型はガングリオシドGD1b, GT1bに、D型はホスファチジルエタノールアミン(PE)に結合することを我々は見出した。しかし、その詳細な分子認識機構および結合様式は不明であ る。本研究では、C型およびD型毒素の受容体認識機構、結合様式を解析し、神経特異的作用との関連を明らかにするため、結合に関与するアミノ酸の同定を行 い、また一方で表面プラズモン共鳴装置(SPR)を用いて、HCと種々の脂質分子との相互作用解析を行った。
  種々のキメラ変異体及び点変異体を作製し、その結合能を調べた。その結果、C型HCについてはA型やB型に保存されているガングリオシド結合モチーフ が存在しており、さらに1282位のヒスチジン残基(H1282)も結合に関与していることがわかった。D型HC内にはガングリオシド結合モチーフは存在 せず、2つのリジン残基(K1117及びK1135)が結合親和性に関与していることが明らかとなった。また、種々の脂質分子とHCとの相互作用をSPR で解析したところ、C型HCはGD1bおよびGT1b含有リポソームに結合したのに対し、D型HCはこれらには全く結合しなかった。一方、フィタン酸 (C16:0[CH3]4)から成るPE(DPhPE)を含有させたリポソームにD型HCは最も強く結合した。その他の脂肪酸から成るPEにはほとんど結 合しなかった。また、GT1bとPE両方を含有させたリポソームを作製し、D型Hcとの結合を調べたところ、PEのみを含有させたリポソームに比べ、D型 Hcの結合量は増加し、解離速度は減少した。得られたセンサーグラムを解析した結果、HcとPE/GT1bリポソームの結合は、Bivalent analyte modelで極めて良好なフィッティングが得られた。このことはD型Hc内に結合領域が2カ所存在することを意味している。これらの成績から、D型毒素の 神経特異的な作用には、PEを構成する脂肪酸の組成と神経終末でのPE及びガングリオシドの動態が深く関与していると考えられた。さらに、現在C型および D型HCの結晶構造解析も進めている。

Y-4 ボツリヌス菌C2毒素のエンドサイトーシスにおけるPI3K/Aktシグナル伝達系の役割

【目的】
C型ボツリヌス菌C2毒素は、C2IとC2IIからなる2成分毒素で、両者の共存下で生物活性を示すことが知られている。C2IIは、タン パク分解酵素の作用により活性型C2IIaとなり、細胞膜に結合後オリゴマーを形成し、これにC2Iが結合してエンドサイトーシスで侵入し、C2IがG- アクチンをADP-リボシル化し、細胞ラウンディング活性を示すことが報告されている。今回、C2毒素のエンドサイトーシスにおけるPI3K/Aktシグ ナル伝達系の役割を検討した。

【方法】
AktとPDK1のリン酸化は、抗リン酸化Akt抗体または抗リン酸化PDK1抗体で検出した。C2IIaの細胞内侵入は、抗C2II抗体を使用し、免疫蛍光法で解析した。
【結果と考察】C2毒素のエンドサイトーシスにおけるPI3Kの役割を検討するため、MDCK細胞とC2毒素をインキュベーションすると5〜30分におい てPI3Kの活性化が認められた。このPI3Kの活性化はPI3K阻害剤であるLY294002(LY)で阻害され、また、C2毒素の細胞内侵入は、LY 前処理で阻害された。次に、PI3Kの活性化で誘導されるPDK1とAktのリン酸化を測定すると、C2IとC2IIa処理でいずれも5〜10分でリン酸 化が認められたが、C2IIaのみでは認められなかった。さらに、これらのリン酸化は、LY処理で阻害された。一方、Akt1/2阻害剤処理で、C2毒素 は細胞内へ侵入するが、F-アクチンの消失は、認められなかった。次に、C2毒素処理後、Aktは、細胞質から細胞膜へ移行することが観察された。C2毒 素による細胞毒性は、PI3K(ウォートマニンとLY)、そして、Akt阻害剤(Akt1/2阻害剤)で阻害された。Aktは、Hsp90と結合して初期 エンドソーム(EE)からのタンパク遊離に関与すると報告されている。Hsp90阻害剤(ゲルダナマイシン、ラディシコール)は、C2毒素の細胞毒性を抑 制した。以上より、エンドサイトーシスで侵入したC2IとC2IIaは、PI3Kの活性化に関連して侵入し、EEまで輸送され、その後、Aktと Hsp90の働きによりEEからC2Iが細胞質に遊離して細胞毒性を示すと考察される。

Y-5 レンサ球菌のゲノム情報を利用したスーパー抗原の起源に関する解析

【目的】
スーパー抗原(SAG)は、主にグラム陽性菌で約100種類以上同定されている多様性に富む病原因子である。A群レンサ球菌(GAS)で は、ゲノム中に3から7種のSAGが存在しているのに対し、G群(GGS)ではspeGのみを有する。また、GASのSAGのうちspeGは染色体上に コードされるが、他のSAGの大部分はファージ上に存在する。GASは、水平伝達によりそれらの多様なSAGを獲得したと考えられているが、SAG自身の 起源は不明である。そこで本研究では、レンサ球菌のSAGの起源の解明を試みた。

【方法】
実験には、劇症型感染症由来GGS7株(speG+4株、speG-3株)を使用し、これらの株のspeG周辺の配列約60kbの塩基配列をダイ レクトシークエンス法により決定した。得られた配列の比較は、現在ゲノム配列を解読中のGGS-124株(speG+)およびRE378株(speG-) の配列情報を利用して行なった。さらに、NCBIからGASの12菌株の全ゲノム配列データを取得し、GGSおよびGAS間でspeG周辺の遺伝子構造を 比較した。

【結果・考察】
GGSのspeG周辺のゲノム上にはファージ様配列や可動性因子が存在せず、GGSのspeGもGASと同様染色体上に位置していた。 GASのspeG近傍にはtransposaseが複数個存在したが、これら以外のspeG周辺の遺伝子構成はGGSとGAS間で高度に保存されていた。 以上の結果は、speGがレンサ球菌の始祖SAGの直系の子孫であることを強く示唆する。また、GGSのspeG-株全てで、speG対応領域が高度に保 存された約20kbのspeG-株特異的な配列で置換されていた。以上の知見から、レンサ球菌の種分化の過程での多様なSAGの分子進化機構が明らかに なったと考えられる。

Y-6 Aeromonas sobria セリンプロテアーゼの成熟化機構の解析

Aeromonas sobriaは汽水域に偏在するグラム陰性桿菌であるが、ヒトの腸管に感染して下痢症などの症状を引き起こす。しかし、免疫力が低下したヒトの場合、皮膚 組織に浮腫や壊死を伴った敗血症症状を引き起こす事も報告されている。これまで、我々はヒトに対して病原性を引き起こすA. sobriaからセリンプロテアーゼ (ASP) を見出し、本菌感染症との関わりについて解析を行ってきた。そして、ASPは生体内でカリクレイン−キニン系の構成成分であるプレカリクレインに作用し炎 症を惹起させる事を明らかにしている。さらに、我々はこの様な病原因子の成熟化機構についても興味を持っており、ASPがいかにして活性な蛋白質に変換さ れるのかについても研究を行ってきた。そして、asp下流には別の遺伝子であるorf2が存在しており、その遺伝子産物であるORF2がASPの成熟化に 関わる事、さらに両者の相互作用にはASPのC末端領域に位置するHis-595が重要なアミノ酸残基である事を明らかにした。しかし、His-595の みでORF2と相互作用しているとは考え難く、他にも相互作用に関わるアミノ酸残基が存在していると考えた。そこで今回、ASPのC末端領域に位置する、 ORF2との相互作用に関わるアミノ酸残基の特定を試みた。
 まず、ASPのC末端領域のアミノ酸残基の内、どのアミノ酸残基がORF2との相互作用に関わるのかをペプチドディスプレイで解析を行った。その結果、 ORF2との相互作用に関わるペプチド配列はASPのC末端領域520〜572位付近の配列と類似しており、この領域がORF2との相互作用に関わってい る事が示唆された。そこで次に、ASPの520〜572位付近に位置するアミノ酸残基をそれぞれAlaに置換した変異体を作製してpull-down assayを行った。その結果、いくつかの変異体はORF2との相互作用に影響を与え、これらのアミノ酸残基がORF2との相互作用において重要な役割を 果たしている事が示唆された。今後、ASPのこの領域についてさらに詳細に解析を行う予定である。

Y-7 生体膜モデル単分子膜へのコレラ溶血毒素の吸着に関する研究

要旨
 コレラ菌が産生するコレラ菌溶血毒(VCH)は,標的細胞の膜上で孔状の集合体を形成し毒性を発現する膜傷害毒素である。VCHが,リポソーム膜におけ るコレステロール(Chol)と特異的に相互作用することが報告されている[1] が,これがどのような機構や構造で吸着し,孔体集合体を形成するのかについては明らかにされていない。そこで本研究では,水面上の展開単分子膜を生体膜モ デルとして用い,pro-VCHの吸着挙動や構造について検討した。
 下層水はTris緩衝溶液(pH 7.4)を使用し,水面温度は20℃で行った。また,VCHとして,N末端に分子内シャペロン活性を持つpro領域が結合したpro-VCHを用いた。
 表面圧30 mN/mまで圧縮したChol展開単分子膜の下層水中に,pro-VCH水溶液を2.2μg/mLとなるように注入すると,膜面積は,十数時間にわたり増 加した。同表面圧条件でChol膜を一定圧制御した場合には,膜面積は一定であったことから,pro-VCHを注入した際の膜面積の変化は,Chol膜へ のpro-VCHの吸着によるものと考えられる。また,この吸着平衡膜をシリコンウエハ基板に移行し,AFM観察を行ったところ,pro-VCHと思われ るドットが分散して吸着した構造が観察された。また,X線反射率測定によりこの吸着構造を解析し,膜面外の構造を精密に評価した。同様な実験を,疎水鎖に 不飽和二重結合を有し,水面上で膨張膜を形成するジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)の単分子膜や,CholとDOPCの混合膜に対しても行 い,脂質組成に依存した吸着構造について検討した。
[1] H. Ikigai et al. Infect. Immun., 64, 2968, 1996; Microbiol. Immunol.,
50, 751, 2006.

Y-8 Providencia alcalifaciensが産生するCytolethal distending toxin (Cdt) の性状解析

Cytolethal distending toxin (Cdt)はタンデムに並んだ3つの遺伝子cdtA、B、Cにコードされるホロ毒素である。CdtBはDNase I様活性を持つ毒性本体であり、CdtA、Cは細胞への結合に関与している。CdtをHeLa細胞等に作用させると細胞周期をG2/M期で停止させ、 24-48時間後に膨化伸張、96-120時間後に致死させる。これまでにCdtを産生する細菌として、Escherichia coli、Shigella属菌、Campylobacter属菌、Haemophilus ducreyi、Aggregatibacter actinomycetemcomitans、Helicobacter属菌等が報告されている。我々は小児下痢症患者からCdtを産生する Providencia alcalifaciensを初めて分離、同定した。P. alcalifaciensのcdt遺伝子を解析したところ、cdtA (774 bp/257 aa)、cdtB (810 bp/269 aa)、cdtC (549 bp/182 aa)と考えられる3つのORFを構成し、CdtBの推定アミノ酸配列にはDNase活性に必須とされているアミノ酸残基が全て保存されていた。
P. alcalifaciens分離株および組換えP. alcalifaciens Cdt (rPaCdt)の粗毒素液を培養細胞に添加したところ、Cdtに特徴的な細胞の伸張・膨化を引き起こし、また細胞周期をG2/M期で停止させた。更に、 この毒性は抗rPaCdtB血清によって中和された。また、PaCdtは大腸菌のCdtとは異なる細胞感受性を有していた。現在PaCdtの性状について さらに詳細に検討している。

Y-9 マクロファ−ジ様細胞におけるTREM-1の発現制御メカニズム

【目的】
TREM-1 (Triggering receptor expressed on myeloid cells-1)はマクロファージや好中球で発現し、LPSを始めとする菌体成分の刺激によって発現が亢進することが知られている。TREM-1は膜受容 体として機能し、細胞内情報伝達経路を活性化させ炎症反応を増強する一方、遊離型TREM-1はdecoy receptorとして機能し、敗血症性ショックモデルを保護する。これらの知見から、TREM-1は炎症反応の増強因子として、また治療の標的分子とし て注目されている。現在までに、LPS刺激によるTREM-1の発現誘導には、prostaglandin E2 (PGE2) やPI3Kが関わることが知られているものの、その転写活性化メカニズムは不明である。我々は、RT-PCR法やルシフェラーゼレポーター解析を行い、 LPS刺激によるTREM-1発現制御メカニズムを詳細に検討した。

【結果・考察】
マウスマクロファージ様細胞RAW264.7においてTREM-1 mRNA発現はLPS刺激後5時間以内に亢進した。さらに、JNK阻害剤のSP600125、PI3K阻害剤のLY294002、ERK阻害剤の PD98059は、LPS刺激によるTREM-1の発現亢進を抑制したが、p38 MAPK阻害剤のSB203580は影響しなかった。一方、レポーター解析において、転写調節因子CREBの応答配列であるCRE (cAMP response element) を変異させたレポーター遺伝子は、レポーター活性が減少し、NF-κB応答配列を変異させるとLPS応答性が低下した。これらの結果より、LPS刺激によ るTREM-1 mRNA発現は、JNK、PI3K、ERKを介して誘導され、さらにプロモーター上のCREやNF-κB応答配列が発現調節に関与することが示唆された。

Y-10 Astrocyte elevated gene-1 (AEG-1) is induced by lipopolysaccharide as toll-like receptor 4 (TLR4) ligand and regulates TLR4 signaling

Astrocyte elevated gene-1 (AEG-1) is induced by human immunodeficiency virus (HIV)-1 infection and involved in tumor progression, migration and invasion as a nuclear factor (NF)-kappaB dependent gene. The involvement of AEG-1 on LPS-induced proinflammatory cytokine production was examined. AEG-1 was induced via NF-kappaB activation in LPS-stimulated U937 human promonocytic cells. AEG-1 induced by LPS subsequently regulates NF-kappaB activation. The prevention of AEG-1 expression inhibited LPS-induced tumor necrosis factor-alpha and prostaglandin E2 production. The AEG-1 activation was not induced by toll-like receptor ligands other than LPS. Therefore, AEG-1 was suggested to be a LPS-responsive gene and involved in LPS-induced inflammatory response.

Y-11 Tumor necrosis factor (TNF)-? enhances lipopolysaccharide (LPS)-induced suppressor of cytokine signaling (SOCS)-3 via preventing the degradation

The regulatory role of tumor necrosis factor (TNF)-alpha on the expression of suppressor of cytokine signaling 3 (SOCS-3) in response to lipopolysaccharide (LPS) was examined by using peritoneal cells from TNF-alpha-deficient mice. The LPS-induced SOCS-3 expression was markedly augmented in peritoneal cells from wild type mice whereas such augmentation was not significant in the cells from TNF-alpha-deficient mice. However, there was no significant difference in the level of SOCS-3 mRNA expression between wild type mice and TNF-alpha-deficient mice. Addition of exogenous TNF-alpha augmented the LPS-induced SOCS-3 expression in TNF-alpha-deficient mice. Moreover, MG 132, a 26S proteasome inhibitor, augmented the LPS-induced SOCS-3 expression in peritoneal cells from TNF-alpha-deficient mice. The tyrosine of SOCS-3 was remarkably phosphorylated in LPS-stimulated peritoneal cells from TNF-alpha-deficient mice but not wild type mice. A tyrosine phosphatase inhibitor, sodium pervanadate, prevented the tyrosine phosphorylation of SOCS-3 in TNF-alpha-deficient mice. Therefore, it was suggested that TNF-alpha prevented the degradation of SOCS-3 protein via inhibiting the tyrosine phosphorylation on LPS stimulation.

Y-12 Thalidomide inhibits LPS induced (TNF)-α and nitric oxide (NO) production through down regulation of MyD88

The effect of thalidomide on LPS-induced TNF-α and NO production was studied by using RAW 264.7 cells. Thalidomide significantly inhibited LPS-induced TNF-α and NO production. Thalidomide prevented LPS induced activation of NF-κB by down-regulating activation of IκB, and IKK-α,β. Thalidomide also inhibited LPS-induced iNOS expression and phosphorylation of AKT, p38, and (SAPK)/JNK but not the expression of IFN-b and IRF-1. The expression of MyD88 protein and mRNA was markedly reduced by thalidomide, however there was no alteration in IRAK1, TRAF6, TRIF, TLR4 and CD14 expression. Thalidomide significantly inhibited LPS induced TNF-α and NO production in response to Pam3Cys, CpG DNA, and imiquimod but not polyI:C. as a MyD88-independent TLR ligand. Therefore, it was suggested that thalidomide might impair LPS signaling via down-regulation of MyD88 protein and mRNA and inhibit LPS-induced TNF-α and NO production.

Y-13 エンドトキシンによる炎症性細胞の活性化とローヤルゼリー酸による抑制-- 炎症性サイトカインおよび一酸化窒素産生抑制作用 --

エンドトキシン(LPS)はToll様受容体(TLR)4シグナルを活性化し、炎症性サイトカインや一酸化窒素(NO)の産生を誘導する。本来、微 生物感染を感知し感染抵抗性を惹起するために活性化されると考えられるTLRシグナルは、時としてエンドトキシンショックに代表される全身性炎症反応を誘 導する。また、TLRシグナルは、自然免疫のみならず獲得免疫にも深く関与していることが明らかとなっており、TLRシグナルを制御することは種々の炎症 性疾患および自己免疫疾患、アレルギー疾患等の治療につながる可能性がある。本研究では、ローヤルゼリーの主たる脂質成分であるローヤルゼリー酸のエンド トキシンシグナルに及ぼす影響について検討を行った。
LPSでマウスマクロファージ様細胞株RAW264を刺激して誘導される一酸化窒素(NO)産生に対するローヤルゼリー酸の影響を検討した結果、ローヤル ゼリー酸はLPS刺激によって誘導されるNO産生を有意に抑制した。また、ローヤルゼリー酸は誘導型NO合成酵素(iNOS)の発現を遺伝子転写レベルで 抑制した。LPS刺激によるiNOS発現誘導には転写因子NF-κBとSTAT1が重要であるが、ローヤルゼリー酸はLPS刺激によるNF-κBの活性化 を抑制したが、STAT1の活性化は抑制しなかった。これらの結果から、ローヤルゼリー酸はNF-κBの活性化を抑制することによって、iNOSの発現を 転写レベルで低下させ、NO産生を抑制することが示唆された。

Y-14 沖縄属島ハブ毒腺phospholipase A2(PLA2)アイソザイムの網羅的解析

クサリヘビ科ヘビであるProtobothrops flavoviridis:ハブは、日本の南西諸島の主に奄美大島、徳之島、沖縄に棲息する毒ヘビである。その粗毒にはホスホリパーゼA2(PLA2)が主要なタンパク質として複数含まれており、いわゆるアイソザイム系を構成することがわかっている。当研究室では、これまでに溶血活性を示す中性[Asp49]PLA2:PLA2、浮腫誘導活性を示す塩基性[Asp49]PLA2:PLA-B;PLA-B’;PL-Y、神経毒性を示す強塩基性[Asp49]PLA2:PLA-N、筋壊死活性を示す[Lys49]PLA2:BPI;BPII が単離・解析してきている。また、これらをコードする遺伝子の塩基配列の解析から、非コード領域では通常の塩基置換率を示しながらコード領域では非同義座 位における塩基置換が同義座位と同程度もしくはより大きいという、いわゆる加速進化を受けることでその多様な一次構造と生理活性を獲得してきたことも明ら かとした。さらに最近、これら毒PLA2アイソザイムの組成やアミノ酸配列がそれぞれの棲息する島特異的(奄美大島−徳之島−沖縄)に異なっていることも報告している。 本研究では、沖縄ハブと認識されながらその体表の色、模様などが異なる二つの沖縄本島属島のハブ(久米島ハブ、伊平屋島ハブ)を対象として、その毒PLA2アイソザイムの組成やアミノ酸配列の特異性を比較することとした。これまでに毒腺cDNAや粗毒のクロマトグラフィーの比較解析から、これら2島のPLA2アイソザイムの組成は沖縄本島のそれとほぼ同じこと、浮腫誘導性の塩基性[Asp49]PLA2の基質相互作用部位には2島特異的な非同義置換が含まれることなどを見出した。こうした新たな知見に加えて、ハブ属ヘビ毒PLA2アイソザイムについて行った網羅的な系統樹解析についても報告する。

Y-15 アエロモナスの産生する菌体外リパーゼの性状解析

【目的】
アエロモナスは下痢原因菌としてしばしば分離されるグラム陰性桿菌で、様々な菌体外毒素を産生する。アエロモナスは淡水に比べ、海水中では 生菌数が減少する事から、私達は本菌が海水と同じ3%食塩下では正常にプロテアーゼを産生できない事を報告した。また、プロテアーゼと同様に菌体外リパー ゼ(ALIP)の産生も食塩存在下では低下する事を見出した。本研究ではこの菌体外リパーゼの性状や産生条件の解析を行った。

【方法】
アエロモナスを培養し、培養上清のリパーゼ活性測定およびウェスタンブロット分析を行った。リパーゼ活性は4-ニトロフェノールパルミチン酸エス テルを基質に用いて測定した。また、培養上清からハイドロキシアパタイトカラム、ゲルろ過カラムを用いて本リパーゼを精製し、CHO細胞に対する傷害作用 を調べた。

【結果と考察】
A. sobria 288 株を普通培地で培養すると培養3時間から80kDaのALIPが培養上清中に検出されるが、培養6時間からALIPは分解され始め、9時間では80kDa ALIPは消失した。一方、ASP,AMP欠損株では80kDa ALIPは培養24時間まで増加した。以上の結果から、ALIPは自身の産生するプロテアーゼによって分解される事が分かった。また、ASP,AMP欠損 株を3%食塩を含む培地で培養すると、ALIPの産生量は減少した。3%食塩を含む培養上清のリパーゼ活性は0.5%食塩に比べ、著しく低下していた。以 上の結果より、本菌は3%食塩下では、ALIPの産生は抑制される事が分かった。
 また、精製ALIPをCHO細胞に処理すると、10 μg/mL処理で、曝露4時間からわずかに形態変化が現れ始め、6時間で細胞の萎縮が観察された。ALIPを加熱処理すると、細胞形態の変化は現れなかっ た。従って、本リパーゼは細胞傷害性を有する本菌の病原性因子の一つであると思われる。

Y-16 血管内皮細胞アポトーシス誘導因子 VAP1 の切断配列特異性の解析

ヘビ毒はその作用から大きく神経性毒と出血性毒に分類される。出血性毒には、マムシ亜科やクサリヘビ亜科の産生する毒が含まれ、出血、壊死、浮腫な ど局所的毒作用や血液循環障害を示す。出血の原因は、血管壁の基底膜の破壊により血管内皮細胞間隙が拡張し赤血球が漏出していくという機構であるといわれ ている。さらに、止血機構の阻害に関わる因子が毒素中に含まれていることが知られている。しかし、血管壁の基底膜の破壊を行うには、より内側に存在する血 管内皮細胞層を通過する必要がある。そのため、出血には血管内皮細胞の破壊が重要であると考えられる。だが、ヘビ毒が血管内皮細胞にどのように作用してい るか明らかにされていない。本研究では、出血性毒をもつクサリヘビ科のニシダイヤガラガラヘビの粗毒から、培養ヒト臍帯静脈血管内皮細胞に (HUVEC) に特異的なアポトーシスを誘導する VAP1 の、切断における基質特異性について調べた。VAPは ADAMファミリーに属し、disintegrin (D-) domain、metalloprotease (M-) domain、cysteine-rich (C-) domainの3種類のドメイン構造から構成される P-V に分類される snake venom metalloprotease (SVMP) である。かねてから本講座で行われていた切断分子の探索によって見つかったいくつかの分子から、切断部位のアミノ酸配列の相同性を検討した結果、ある共通 の配列が見つかった。この予想切断部位を含むタンパク質の一部をリコンビナントによって作成した。本研究の結果、 VAP1 によって切断を受けるタンパク質が新たに見つかった。VAP1による切断部位のN末端解析の結果、アミノ酸配列は予想切断部位のアミノ酸配列と、ある一定 の相同性を示した

Y-17 Plesiomonas shigelloidesのアポトーシス誘導メカニズムの解明

【目的】
我々は,海外旅行者下痢症患者より高頻度に分離されることが知られている/Plesiomonas shigelloides/のP-1株(臨床分離株)の生菌並びに本菌の産生する細胞傷害性外膜タンパク質(cytotoxic outer-membrane protein; ComP)がCaco-2細胞に対し,アポトーシス誘導活性を示すことを報告してきた。今回は,培養上清より調製したComPと P-1株生菌によるアポトーシス誘導機構を詳細に解析したのでその結果を報告する。

【方法】
/P. shigelloides/ WT株(P-1,臨床分離株)をBrain Heart Infusion にて37℃,24時間振とう培養し,生菌を調製,さらに培養上清よりComPを精製した。カスパーゼの活性化はCaco-2細胞を使用し, Immunoblotや蛍光染色などにより解析した。また,ミトコンドリア膜電位の低下とシトクロムCの遊離,ComPの細胞付着性,サイトゾルへのCa2+流入作用はFACS解析とImmunoblotにより,各阻害剤によるアポトーシス活性・カスパーゼ活性への影響は蛍光染色やFACS解析により検討した。

【結果】
caspase-9,-3の活性化とミトコンドリア膜電位の低下,シトクロムCのサイトゾルへの遊離はComP添加時とP-1株感染時の両者に共 通して見られた。しかし,caspase-8の活性化はComP添加時では確認されたがP-1株感染時では認められなかった。このことから,ComP添加 時とP-1株感染時ではアポトーシス誘導機序が異なることが示唆された。また,菌体内からLPSを除いた状態で精製したComPは細胞付着性,溶血活性, 細胞内へのCa2+の流入作用を示した。細胞内Ca2+濃度上昇によるカルパイン等のアポトーシスへの関与についても検討する予定である。