毒素シンポジウム
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第57回毒素シンポジウムポスター演題

P-1 Human naive antibodies against Shiga toxins isolated from a phage-display library

○Paola Neri1, Susumu Hamada-Tsutsumi2, Yasushi Akahori2, Kentaro Tsukamoto1, Hideyuki Arimitsu1, Sadayuki Ochi1, Toshihimizu1, Yoshikazu Kurosawa2, Takao Tsuji1 (1Department of Microbiology, School of Medicine, 2Division of Antibody Project, Institute for Comprehensive Medical Science, Fujita Health University)

 Shiga toxins (Stx-1 and Stx-2) are main virulence factors involved in the pathogenesis of hemorrhagic colitis and hemolytic-uremic syndrome following enterohemorrhagic Escherichia coli (EHEC) infection in humans. There are still no effective therapeutic agents available for the treatment of EHEC infection. Several therapeutic approaches targeting Stxs are ongoing for the treatment of Stx-mediated diseases. Among these approaches, passive immunotherapy using monoclonal antibodies has been demonstrated to be effective for neutralizing the toxicity of Stxs. However, the production of monoclonal antibodies is expensive and time consuming. Moreover, almost of the monoclonal antibodies studied are not of human origin, and thus immunogenicity may be an additional problem.

In this study, single chain variable fragment (scFv) antibodies against Stxs were isolated from a phage-display library constructed from human naive repertoire. The screening of the library was performed with His-tagged Stx-2B subunit (Stx-2BH). Three rounds of screening with Stx-2BH followed by one subtractive screening with an Stx-2BH with mutations at the receptor binding sites were performed to select clones producing antibodies targeting the binding epitope of Stx-2BH. The antibodies were then purified and characterized for their binding and neutralizing activity against Stx-1 and Stx-2. The scFv antibody from clone B22 completely neutralized the toxicity of Stx-1 in HeLa cells cytotoxicity assay. However, this antibody did not show neutralizing activity against Stx-2. In order to increase the binding activity by the effect of multivalent interactions, we constructed pentameric form of scFv antibodies.

P-2 毒素原性大腸菌H10407株Entプラスミドの機能領域の配列解析

○越智定幸1、清水 徹2、大谷郁2、有満秀幸1、塚本健太郎1、佐々木慶子1、加藤道夫1、一瀬休生3、辻孝雄1 (1藤田保衛大・医・微生物、2金沢大院・医・細菌感染症制御、2長崎大・熱研・生態疫学)

毒素原性大腸菌 (ETEC) H10407株 (O78:H11)は、ETEC菌株として良く研究されている菌株の一つである。ETEC菌株のEntプラスミドの水平転移能は、他の菌株への病原遺伝子の伝達に関連することから重要であると考えられる。H10407株のEntプラスミドは、それ自身には自己転移能が存在しない事が報告された。一方、他のEntプラスミドには自己転移能の存在を示唆する報告があり、Entプラスミドの自己転移能の詳細は不明である。この自己転移能を含むEntプラスミドの実態を明らかにするためには、Entプラスミドの塩基配列解析が有用な手段と考えられる。そこで、我々は、H10407株のEntプラスミドの全塩基配列を決定し、その配列解析から、Entプラスミドの機能、特に、自己水平転移能に関連する因子について検討した。

 H10407株のEntプラスミド (pEntH10407) は、その配列解析から、エンテロトキシンがコードされるpathogenicity islet領域とプラスミド複製、メインテナンス等のプラスミドの基本機能に関連する領域、そして、接合伝達因子、Traのコードされる領域の3つの異なる領域から構成されるモザイク状のプラスミドであることが明らかになった。Traは、接合伝達によるプラスミドの自己転移に関連することが知られている。そこで、完全なtra領域を有する接合伝達プラスミドであるFプラスミドやR100のtra領域とpEntH10407のtra領域を比較した。その結果、本Entプラスミドのtra領域は、多くのtra遺伝子の欠落した不完全なtra領域を形成していることが判明した。次に、pEntH10407の自己伝達能の有無について接合伝達試験を行った。その結果、pEntH10407は、非常に低頻度ではあるが、不完全なtra領域に起因する自己伝達能を有することが判明した。以上から、不完全なtra領域によるpEntH10407の自己転移能は、本Entプラスミドの自己伝達において機能すると推察された。

P-3 抗腫瘍活性を持つ無毒性ジフテリア毒素変異体CRM197の結晶構造解析

○前田真吾1、陰山卓哉2、柄谷肇1、目加田英輔2、北所健悟1 (1京都工芸繊維大学・大学院工芸科学研究科・生体分子工学専攻、2大阪大学・微生物病研究所・細胞機能分野)

 ジフテリア毒素は、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)が産生する分子量58,000の毒素タンパク質である。この分子は3つのドメインからなり、毒性の本体であり真核細胞のタンパク質合成に必須なペプチド伸張因子EF-2を不活性化するADP-リボシル化活性を有するドメインと、細胞膜に結合するレセプター結合ドメインおよび細胞内に送り込む作用を有するドメインがある。ジフテリア毒素の細胞膜上のレセプターは、ヘパリン結合性上皮細胞増殖因子HB-EGF膜結合型前駆体(proHB-EGF/HB-EGF)であり、ジフテリア毒素はEGFドメインへの結合を介して、細胞内に侵入し、細胞毒性を発揮する。

 このジフテリア毒素蛋白質の変異体である CRM197は、52番目のグリシンがグルタミン酸に変異したものであり、全く細胞毒性を示さない。このことから、このジフテリア毒素変異体はHB-EGFを標的とした新たなガン標的治療薬とりわけ卵巣癌の標的治療法への効果が期待されている。  今回、CRM197タンパク質の結晶化を行い、分子置換法によって立体構造を決定し、Wild typeとの構造比較を行った。その結果、毒性の本体である活性ドメインについて、立体構造が大きく変化し、毒性が失われている可能性が示唆された。

P-4 ボツリヌス神経毒素受容体結合領域の結晶構造と細胞内侵入機構の解析

○塚本健太郎1、田中良和2、Nipawan Nuemket2、越智定幸1、有満秀幸1、加藤道夫1、中村佳司3、小崎俊司3、辻 孝雄1 (1藤田保衛大・医・微生物、2北大・創成、3大阪府大院・生命環境)

ボツリヌス神経毒素(A〜G型)は極めて致死性の高い蛋白毒素であり、弛緩性麻痺を引き起こす。本毒素は約50kDaの軽鎖、約100kDaの重鎖から構成されており、重鎖C末端領域(Hc)を介して神経細胞膜上に存在する受容体に結合する。毒素受容体について、我々は蛋白質成分以外に細胞膜上の脂質分子ガングリオシド、ホスファチジルエタノールアミン(PE)に着目し、C型およびD型毒素については蛋白質成分よりこれら脂質分子が重要であると指摘してきた。しかし、C型やD型毒素についての結晶構造は明らかにされておらず、毒素-受容体相互作用の詳細な結合様式の解明には至っていない。そこで本研究ではD型とC型のキメラ構造を有するDCモザイク毒素重鎖C末端領域(OFD05HC)の結晶構造と細胞内侵入機構についての解析を試みた。

 His-tag融合蛋白として精製したOFD05Hcを結晶化し、この結晶について大型放射光施設(Spring 8およびPF)にてX線回折データを収集したところ、2.8Åの回折データを得ることができ、そこから構造決定に成功した。すでに明らかとなっているA型およびB型のHcと比較すると、OFD05Hcは 一部共通した構造を有している一方で、ガングリオシド認識に関与すると予想される領域は異なる構造をしており、それを構成するアミノ酸も他の型とは異なる ことが考えられた。現在、結合に関与すると予想されるアミノ酸残基についてアラニン置換体を作製し、結合部位の特定を試みている。また、Neuronに分化させたP19細胞をグリコシルセラミド合成阻害剤で処理したところ、OFD05Hcの細胞への結合が低下し、細胞内に侵入したHcも減少した。このことから、本毒素が神経細胞に作用する際には、ガングリオシドへの結合が必要不可欠であると考えられた。

P-5 ボツリヌス神経毒素中和能を有するモノクローナル抗体の特徴

○趙 海洋、中村 佳司、幸田 知子、向本 雅郁、小崎 俊司 (大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 獣医感染症学教室)

【目的】
ボツリヌス神経毒素(BoNT) は高い毒性を持ち微量で動物に致死性の中毒を引き起こす。抗体による毒素中和に関する研究は治療用ウマ抗毒素血清やホルマリンで無毒化したトキソイドを免 疫し作製されたモノクローナル抗体(mAb)を用いて解析されている。今回、我々はトキソイドで基礎免疫後BoNTを複数回接種したマウスより得られた mAbを用いて、BoNTおよび複合体毒素に対する反応性を調べることにより新たな知見を得たので報告する。

【方法】
A型神経毒素(BoNT/A1、62A株)のトキソイドを抗原としてマウスを2週間隔で3回免疫後、BoNT/A1を1週間隔で5回追加免疫し、常法によりハイブリドーマを作製した。ハイブリドーマの無血清培養上清よりmAbをProtein Gで精製した。各mAbのBoNT/A1に対する中和活性はマウス腹腔内投与法により評価した。各mAbの認識ドメイン(軽鎖、重鎖C末端(HC)、重鎖N末端(HN))は免疫ブロッティングにより、BoNT/A1、BoNT/A2 (Chiba-H株)およびトキソイドへの反応性はELISA法により、複合体毒素への結合能は免疫沈降法により調べた。

【結果・考察】
毒素中和能を有するmAb が認識するBoNT/A1のドメインについて解析したところ、すでに報告されている軽鎖およびHCだけでなく、HNを認識するmAbが複数存在した。これ らのmAbの中にはBoNT/A2に反応しない抗体が含まれており、BoNT/A1に特異的な抗原部位も中和に関わっていることが明らかとなった。重鎖を 認識するmAbの中に、弱酸性条件下(pH 6.0)で免疫沈降を行うと、複合体毒素(M毒素、L毒素)と結合しない抗体が多数存在した。このことはBoNT/A1に対する抗体が認識する領域を無毒 成分が構造的に覆い隠すことで結合を阻害したものと考えられる。今後、これら特徴的なmAbについてエピトープ解析を行う予定である。一方、軽鎖認識 mAbは得られたすべてにおいてBoNT/A1、BoNT/A2および複合体毒素と反応した。軽鎖認識抗体は毒素のサブタイプや複合体構造の有無に左右さ れず安定して神経毒素と反応することから、A型毒素の検出用抗体として適していると考えられる。

P-6 シナプトタグミンII発現PC12細胞のボツリヌスB型神経毒素に対する作用

○幸田 知子、向本 雅郁、小崎 俊司 (大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 獣医感染症学教室)

ボツリヌスB型神経毒素(BoNT/B)の受容体はシナプトタグミンI(StgI)およびII(StgII)とガングリオシドGT1bの複合体であることが明らかになっている。StgIは中枢神経系にStgIIは末梢神経系に多く発現している。BoNT/Bの重鎖C末端領域は、神経伝達物質の開口放出に伴いシナプス小胞内腔に突出しているStgIIのN末端領域とガングリオシドGT1bの複合体と高い結合親和性を示し、神経細胞内に侵入することにより作用を発揮すると考えられている。今回StgII遺伝子を発現したPC12細胞を用いて、StgIIのBoNT/B受容体としての機能解析を行った。PC12細胞はStgIのみが発現している。StgIIのPC12細胞での発現は、immunoblotと免疫染色法により確認した。StgII発現PC12細胞はBoNT/B処理により、基質であるVAMP2が切断され、高カリウム刺激によるドーパミンの放出阻害活性が有意に低下していた。またStgII発現PC12細胞にガングリオシドを添加するとBoNT/Bの作用が増強された。ガングリオシドを添加したPC12細胞はBoNT/B処理によりVAMP2が切断され、StgI欠損株PC12細胞にStgII遺伝子を発現すると、VAMP2が切断された。StgIはガングリオシド存在下、StgIIは単独でBoNT/Bの受容体として機能することが分かった。現在、BoNT/BとStgIおよびIIのPC12細胞での動態を詳細に調べている。

P-7 B型ボツリヌス菌由来のHA3の結晶構造解析

○西村昂亮1、竹ケ原由紀2、柄谷肇1、藤永由佳子2、北所健悟1 (1京都工芸繊維大学・大学院工芸科学研究科・生体分子工学専攻、2大阪大学・微生物病研究所・感染症国際研究センター・感染細胞生物学研究グループ)

ボツリヌス神経毒素複合体は,ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)が産出する分子量約150 kDaの毒素タンパク質で、微量で宿主に致死的な影響を与える世界最強の毒素である。シナプスのSNAREタンパク質を標的に切断する亜鉛プロテアーゼを活性本体として有し、宿主を麻痺させる。この毒素は,無毒のタンパク質〔nontoxic nonhemagglutinin(NTNHA)〕及び3種類の赤血球凝集因子[hemagglutinin(HA)]と会合して、プロジェニター毒素と呼ばれるタンパク質複合体を形成する。本研究で対象とするヒトに感染し,最も毒性が強いB型毒素が有するHAは、3つのsubunit(HA-1, 2, 3)を有し、腸管上皮細胞表面のTight Junctionのタンパク質群を分散させて細胞バリアを通過する。
 B型ボツリヌス菌由来の赤血球凝集因子のうち、HA-3について結晶化を行い、水銀誘導体を用いたSAD法により立体構造を決定した。その結果、HA-3は多くのβストランドを有し、「ユリの花」のような全体構造をとっていた。すなわち、大きな花弁と小さな花弁が3つずつ集まった3量体構造を有し、中央に内径26 Åからなる孔を形成していた。更にシアル酸ならびにシアル酸誘導体との複合体の結晶解析を行い、その結合様式を原子レベルで解析することによって、HA3のレクチン活性のメカニズムについて検討した。

P-8 ボツリヌス菌ホスホリパーゼCの酵素活性と生物活性

○阪口義彦1, 小田真隆2, Ni Nengah Dwi Fatmawati3, 山本由弥子3, 難波ひかる3, 唐澤忠宏4, 小林敬子2, 永浜政博2, 櫻井 純2, 小熊惠二3 (1宮崎大・IR推進機構, 2徳島文理大・薬・微生物, 3岡山大院・医歯薬総合・病原細菌, 4金沢大・医・保健学科・医学検査)

ボツリヌス菌は産生する神経毒素の抗原性の違いにより、A〜G型に分かれる。これらのうち、C型とD型菌のみホスホリパーゼC(PLC)を産生する。一方、ウエルシュ菌α毒素は、ガス壊疽の病原因子であり、PLCとスフィンゴミエリナーゼ(SMase)の2つの酵素活性を有している。我々はC型とD型PLCをコードする遺伝子(bota)の全塩基配列を決定した。この情報をもとに、組換えD型PLC(Dbota)の発現および精製を行い、酵素活性(卵黄活性, 溶血活性など), 生物活性(マウス致死活性)を測定し、α毒素と比較した。

 Dbotaはα毒素とは53%の相同性を示し、α毒素で酵素活性に重要であるZn2+結合モチーフがよく保存されていた。Dbotaの卵黄活性は、CoCl2存在下でα毒素と比べて1/10低い活性を示した。溶血活性においては、CoCl2存在下でウサギ赤血球を用いた場合、α毒素と比べて1/1,000低い活性を示したが、ヒツジ赤血球ではほとんど活性が認められなかった。ホスファチジルコリン(PC)-またはスフィンゴミエリン(SM)-リポソームの破壊作用においては、Dbotaはα毒素と比べPC-リポソームでは1/100、SM-リポソームでは1/60低い活性を示した。また、ウサギまたはヒツジ赤血球膜の結合を調べると、Dbotaはα毒素に比べて強い結合を示した。SM-またはPC-リポソームを用いた場合でも同様であった。BIAcore解析により、基質(PC)とDbotaとの親和性を調べたところ、Dbotaはα毒素に比べてPCに対する強い結合を示した。一方、マウスの致死活性では, Dbotaはα毒素に比べて1/1,500低い活性であった。従って、Dbotaは卵黄活性を示し、良く血球に結合するが、溶血および致死活性はα毒素と比較して著しく低いことが結論された。

 最近、我々はA型, B型, E型, F型, G型菌においても卵黄寒天培地でPLC活性を示すことを明らかとした。現在、A型とF型botaについて、全塩基配列を決定した。本遺伝子の塩基配列は720bp、推定アミノ酸残基は239個であった。アミノ酸レベルで比較すると、破傷風菌のPLC related proteinと59%の相同性が認められた。このことについても報告する予定である。

P-9 Clostridium septicum α毒素による心原性ショックの病態生理機構の解明

○向本 雅郁、松村 朋恵、幸田 知子、小崎 俊司 (大阪府大院・生命環境・獣医感染症学)

【背景・目的】
Clostridium septicumは ヒトや家畜にガス壊疽を引き起こす致死性の高い人獣共通感染症の原因菌である。本菌は筋肉組織壊死やガス形成、さらには毒血症からの循環器障害を引き起こ す。ヒトのガス壊疽の直接的な死因は心原性ショックであると考えられており、家畜においても同様の機序により突然死を起こすと考えられる。本菌の主要な病 原因子であるα毒素は細胞壊死毒素である。α毒素前駆体は受容体である細胞膜表面のGPIアンカー蛋白に結合後、蛋白分解酵素による限定分解を受け活性化される。活性化α毒素は細胞膜上の脂質ラフトに集積し6〜7量体のoligomerとなり、細胞膜上にporeを形成することで細胞死を引き起こす。本検w)?、究では、C.septicumα毒素の心臓に対する毒性に焦点を絞り、ガス壊疽における心原性ショックの病態生理機構を明らかにすることを目的とした。

【材料・方法】
α毒素はC.septicum(NCTC 547株)から既存の方法に従って精製した。自立拍動する心筋細胞を胎齢16日Wister系ラットより調製し、α毒素添加後の心筋細胞の収縮変化を顕微 鏡下でビデオ画像として取り込み、拍動解析ソフトにより解析を行った。拍動停止時の心筋細胞膜上でのα毒素の分子動態を明らかにするため、α毒素添加後の 心筋細胞を回収し、ショ糖密度勾配遠心により分画後、Western blottingを行いα毒素を検出した。α毒素に対してパルミチン酸処理を行いα毒素の細胞毒性を阻害したときの心筋細胞に対する作用を調べた。さら に、α毒素の拍動停止作用に及ぼす細胞外Ca2+濃度及びATPの影響を調べた。

【結果】
α毒素を心筋細胞に添加したところ、まず心筋細胞の拍動リズムが速くなり、その後細胞死が起こる前に急速に拍動停止に至った。拍動停止直後の細胞から毒素oligomerを検出した。パルミチン酸処理毒素を心筋細胞に添加したところ、拍動停止を引き起こさなかった。拍動停止時にα毒素がpore形成に至っていれば濃度勾配による細胞内外へのイオンの移動が起こると考えられるため、α毒素添加時の細胞外Ca2+濃度を変化させ、α毒素に対する心筋細胞の反応性の違いを調べた。Ca2+濃度が1 mM以上の場合、心筋細胞は拍動リズムが速くなった後拍動を停止し、その後拍動を再開しなかった。Ca2+濃度が0.1 mM以下の場合、心筋細胞は拍動リズムが速くなる前に拍動を停止し、その後一時的に拍動が再開した。拍動を停止した心筋細胞にATPを添加したところ、一過性に拍動が確認された。

【考察】
拍動停止時には毒素がoligomerとなぁw)?閨A膜上でporeを形成していることが推察さku黷ス。ATP添加により心筋細胞の拍動が再開したことから、拍動停止の直接的要因としてATPの枯渇が考えられた。

P-10 細菌の感染拡大とスフィンゴミエリナーゼ

○小田真隆、魚尾佳奈、永浜政博、櫻井純 (徳島文理大・薬・微生物)

【目的】
近年、セレウス菌による髄膜炎、そして、敗血症の症例が報告され、本菌は、院内感染症の原因菌として注目されている。本菌の産生するスフィンゴミエリナーゼ(Bc-SMase)は、多くの病原性細菌より類似の酵素が産生され、これら細菌の宿主防御機構からのエスケープに重要な役割を演じていると報告されている。本研究では、Bc-SMaseのマクロファージ(Mφ)に対する影響について、分子生物学、及び、構造生物学的手法を用いて解析した。

【結果】
マウス腹腔Mφを用い、その主要な感染防御機能である貪食能、及び、活性酸素産生作用に対するBc-SMaseの影響を検討した。その結果、Bc-SMase処理Mφでは、貪食能、及び、活性酸素産生能がいずれも低下することが明らかとなった。次に、Bc-SMase処理Mφの細胞膜内セラミド分子種の変化を解析した結果、C16:0-セラミド、及びC24:1-セラミドが特異的に増加し、さらに、各セラミドでMφを処理したところ、貪食機能、及び、活性酸素産生作用は、その濃度に依存して低下した。また、BODIPY C12-sphingomyelinで染色したMφをBc-SMaseで37℃、1時間処理した結果、蛍光の集積像(セラミドクラスター)が認められた。さらに、FRAP解析を行った結果、Bc-SMase処理では、コントロール細胞と比較して、蛍光強度の回復遅延、すなわち、細胞膜の流動性の低下が認められた。

【考察】
Bc-SMaseは、Mφに作用すると、セラミドクラスターの形成亢進に伴う膜の流動性の低下を引き起こし、貪食能、及び、活性酸素産生能の低下を惹起すると推察される。

P-11 ウエルシュ菌イオタ毒素のイオタb成分の細胞毒性の検討

○永浜 政博1、梅崎 真理子1、小田真隆1、小林 敬子1、刀祢 重信2、須田 泰司2、櫻井 純1 (1徳島文理大・薬・微生物、2川崎医大)

【目的】
ウエルシュ菌のイオタ毒素は、IaとIbから成る2成分タンパク毒素で、IaとIbの両者の共存下で生物活性を示す。我々は、Ibが標的細胞に結合後、これにIaが結合して細胞内に侵入して、G-アクチンをADP-リボシル化し、細胞毒性の発現を報告した。一方、Ib単独での生物活性は報告されていない。そこで、Ib単独での細胞に対する作用を検討した。

【方法】
使用細胞は、ヒト子宮外陰部上皮癌由来のA431細胞、ヒト肺胞上皮癌由来のA549細胞、ヒト大腸腺癌由来のDLD-1細胞、イヌ腎尿細管上皮細胞由来のMDCK細胞である。細胞内ATP量の測定は、プロメガ社のATP測定キットを用いて測定した。Ibの細胞への結合は、抗Ib抗体を用い、蛍光抗体法で分析した。

【結果と考察】
MDCK細胞、そして、A431細胞にIbを作用させたところ、Ibは、MDCK細胞には、いかなる作用も示さないが、A431細胞に対しては膨化作用を示した。そこで、細胞内ATP量の変化を指標として、種々の細胞に対するIbの効果を検討すると、A431細胞、次いで、A549細胞、そして、MDCK細胞の順にATP量の低下が認められ、DLD-1細胞においては、その作用は、全く認められなかった。次に、Ibの細胞におけるオリゴマー形成能を調べたところ、A431細胞においては、オリゴマー形成能の高いことが判明した。さらに、Ibの細胞への侵入をMDCK細胞とA431細胞で比較すると、MDCK細胞において、Ibは細胞内に侵入するが、A431細胞においては、細胞膜への結合のみで、侵入しないことが判明した。A431細胞をIb処理後、核を染色すると、核のヘキスト染色や電顕像における核の染色性の低下が判明した。以上から、IbはA431細胞に結合後、細胞膜でオリゴマーを形成し、ATP低下を誘導して、細胞や核の膨化など、Ib単独で作用することが明らかとなった。

P-12 Plesiomonas shigelloides 9菌株によるcomP遺伝子のスクリーニンと生物活性

○三上 貴弘、小河 朝子、柴田 信之、大川 喜男 (東北薬科大学 感染生体防御学教室)

【目的】
我々は、海外旅行者下痢症患者より高頻度に分離されることが知られているPlesiomonas shigelloidesのP-1株(臨床分離株)の細胞傷害性外膜タンパク質(cytotoxic outer-membrane protein; ComP)について、その構造、腸管病原性と細胞傷害性(アポトーシス)誘導活性などについて詳細に報告してきた。今回は、Plesiomonas shigelloides 9菌株を使用して、comP遺伝子の存在の有無と各種生物活性との関連性について検討を行った。

【方法】
Plesiomonas shigelloides の臨床分離株、環境分離株、計9菌株をBrain heart infusion液体培地にて37℃、24時間振とう培養し、生菌を調整し、DNAを抽出した。その後、PCRを行い、comP遺伝子の有無を確認した。また、細胞傷害性や溶血活性などの生物活性の測定も行った。

【結果と考察】
PCRを行った結果、臨床分離株はcomP遺伝子が存在する菌株が多く、環境分離株はcomP遺伝子の存在は確認されなかった。また、comP遺伝子が見られる菌株で、細胞傷害性が高いことが示された。今後、各生菌を用いてマウスを用いた感染実験などについても検討し、comP遺伝子の役割について明らかにしていく予定である。

P-13 出血性ヘビ毒素VAP-1、VAP-2の切断部位特異性の解析

松本佳央理、○鈴木雄士、赤坂茉莉、澤田均、荒木聡彦 (名古屋大学大学院理学研究科生命科学専攻)

(目的)
出血性ヘビ毒による出血の責任毒素は出血性メタロプロテアーゼであるが、その主要な標的は何なのかは明らかになっていない。我々はその標的を解明し出血機構を明らかにすることを目指し、基質選択性の高い出血性プロテアーゼであるガラガラヘビ(Crotalus atrox)由来VAP-1、VAP-2の切断部位特異性を解析した。

(方法)
基質とする組換タンパク質は、Human Placenta cDNA LibraryをtemplateとしてPCRを行い、発現ベクターpGEX-4T-1とpET-32a (+)を用いて、N末端側にGSTタグを、C末端側にHisタグを付加させたものを作製した。VAP1、VAP2を用いて、天然、組換えペプチドに対して切断実験を行い、N末端アミノ酸解析を行った。

(結果)
VAP2による切断実験の結果、VAP2の切断部位配列が判明した。今までに我々が解析してきたVAP1の結果と同様に、天然基質の場合においてはP1’ 残基が疎水性アミノ酸であることが多かった。また、すべての場合においてP2’ 残基はバリンであった。また、組換えタンパク質を用いたVAP1による切断実験では、P1’ 残基は疎水性アミノ酸であったが、天然基質の場合と異なり、P2’ 残基にバリンはなかった。

(考察)
出血性ヘビ毒素VAP1、VAP2は、MMP やADAM17に見られないユニークな切断特異性を示した。VAPのクレフト構造から見るとクレフトの外側に位置するP2’ 残基は切断には影響しないと考えられるにもかかわらず、VAP1、VAP2の両者において切断基質のP2’ 残基に特異性を示したということは、クレフトの立体構造に依存しない全く新しい切断基質認識機構があることが示唆される。また、同じ出血活性を持つ、異なるタンパク質VAP1とVAP2で共通の特徴が得られたことは、生理機能に重要な意味を果たしていると考えられる。

P-14 海産軟体動物アメフラシは海藻の光合成色素を化学防御に転用する

○神尾道也1, 2, Tiphani V. Grimes1, Melissa H. Hutchins1, Robyn van Dam1, Linh Nguyena1, Seymanur Yaldiza1, Charles D. Derby1 (1Neuroscience Institute and Department of Biology, Georgia State University, 2東京海洋大学 海洋科学部 海洋環境学科)

全ての生物は他の生物からの捕食の危機に晒されており、一般に移動能力の低い生物は捕食者に対する物理的な障壁または化学的な忌避剤による強力な防御機構を 備えているが、その忌避剤を同定して、その作用機構を詳細に調べた例はほとんど無い。海に生息する大型の軟体動物アメフラシは捕食者に襲われると紫色のイ ンクと白色の粘液であるオパリンを分泌、放出して捕食者の攻撃を逃れる。本研究ではこのインクおよびオパリンの捕食者に対する作用機構を明らかにすること を目的とし、アメフラシの仮想の捕食者として広食性の捕食者であるブルークラブを用いて実験を行った。作用機構を明らかにするために、摂食阻害実験を行っ たところ、インクが強くカニの摂食阻害作用を示すこと、オパリンは弱いながら同様の作用を示すことが明らかになった。また、目隠しをしたカニを用いた実験 を行い、インクがカニの視覚ではなく、化学感覚に働いて摂食行動を阻害することが明らかになった。次に、摂食阻害を指標としてインクから主要な活性物質を 単離し、アプリジオビオリンであることを明らかにした。また、その前駆体と思われるフィコエリスロビリンも低濃度ながらインク中に検出され、同濃度で同程 度の摂食阻害活性を示すことがわかった。これらの化合物は餌である紅藻類の光合成システムの一部であるアンテナ色素、フィコエリスリンに由来するものであ り、本研究の結果は動物が植物の光合成色素を生体内で化学防御物質に変換することを明らかにしたものである。海洋生物において、化学防御物質を食物から取 り込み、自身の化学防御に利用する例は良く知られているが、光エネルギー捕集色素を化学防御物質に転用する例は本研究が初めての報告である。この光合成色 素は紅藻であれば必ず持っており、アメフラシにとって入手が比較的容易で、材料不足に陥る危険が少ない優れた原料である。アメフラシはその皮膚や内臓にも 他の化学防御物質と思われるものを含むことが、いくつかの研究で知られており、複数の化学防御物質の組み合わせにより、捕食を逃れていると考えられる。

P-15 緑藻類Chlorella多糖成分のマクロファージ活性化能

○後藤麻美、杉山剛志、森裕志 (岐阜薬科大学 生命薬学大講座 微生物学研究室)

緑藻類であるクロレラはその卓越した増殖能力とそれに含まれるアミノ酸、ビタミン、ミネラルなどの豊富な栄養素から健康食品として用いられている。しかし、 その生理活性については不明な点が多い。本研究ではクロレラの産生する多糖成分に注目し、その生理活性を明らかにする目的で、マウス由来マクロファージ様 細胞株RAW264のNO産生に及ぼす影響を検討した。さらにクロレラ多糖成分の分画を行い、活性物質の精製を試みた。
クロレラ中性多糖粗精製粉末を70℃のミリQ水で加熱溶解後、フェノール抽出した水層から中性多糖画分(NPS)を得た。また、酸性多糖粗精製粉末をアルカリ条件下で70℃加熱溶解後、フェノール抽出した水層から酸性多糖画分(APS)を得た。APSはさらに酢酸加水分解後、その上清をフェノール抽出して得られた水層を酸性多糖水溶性画分(APS-aq.)、中間層を酸性多糖中間層画分(APS-int)とした。また、APS水溶液をベンゼン・エタノールで抽出後、上清をさらにクロロホルム・メタノールで抽出した水層より酸性多糖脱脂画分(APS-delip)を得た。RAW264をクロレラ多糖成分で刺激して誘導されるNO産生量を比較したところ、いずれのクロレラ多糖画分も濃度依存的にNO産生を誘導した。その活性はNPSよりもAPSで高く、APS-intで最も高い活性を示した。一方、APS-aqやAPS-delipにおいても比較的高いNO産生能がみられたことから、クロレラ多糖にも活性があると考えられた。今後、活性本体の更なる精製とサイトカイン産生誘導活性や詳細な活性発現機構について検討を行う予定である。

P-16 2-AminopurineによるTLRシグナル抑制メカニズムの解析

○森山和哉、高橋圭太、杉山剛志、森裕志 (岐阜薬科大学 生命薬学大講座 微生物学研究室)

 2-Aminopurine(2-AP)はウイルス感染時に誘導されるdouble strandedRNA-dependent protein kinase(PKR)の特異的な阻害剤としてしばしば研究用に用いられる化合物である。以前の我々の研究から、2-APはToll様受容体(TLR)リガンド刺激によるNO産生を阻害し、その作用はIFN-βの誘導阻害によるものであることが示されている。また、PKRノックアウトマウスのマクロファージでもLPS刺激によるNO産生が正常に起こることから、2-APによるNO産生抑制はPKR阻害非依存的であることが示唆されている。TLR刺激により T型IFN産生を誘導するシグナル伝達経路は、TLR3および4刺激によりTRIF−TBK1/IKKi−IRF3を活性化する経路とTLR7および9刺激によりMyD88依存的にIRF7を活性化する経路が知られている。本研究では2-APがTLRシグナルを抑制するメカニズムを明らかにするために、シグナル分子の発現プラスミドとルシフェラーゼレポーター遺伝子を用いて2-APの作用点となるシグナル分子の同定を試みた。

 RAW264において、2-APはLPS刺激によるIFN-α4プロモーターおよびIFN-βプロモーターの活性化を抑制したが、NF-κBの活性化は抑制しなかった。IRF7の発現によるIFN-α4プロモーターの活性化は2-APによって抑制される傾向にあった。また、IKKiの発現によるIFN- βプロモーターの活性化は、2-APにより抑制された。

これらの結果から、2-APはTLRリガンド刺激によるIKKiおよびIRF7の活性化、またはその下流の分子の活性化を阻害すると考えられた。

P-17 マクロファ−ジ系細胞におけるTREM-1遺伝子の発現制御メカニズム

○細田浩司1、鈴木 香1、村上泰介1、田村弘志 2、喜田 聡3、長岡功1 (1順天堂大学医学部生化学・生体防御学講座、2生化学バイオビジネス(株)、3東京農業大学応用生物科学部バイオサイエンス学科)

【目的】
TREM-1 (triggering receptor expressed on myeloid cells-1)はマクロファージや好中球で発現し、LPSをはじめとする菌体成分の刺激によって発現が増強する。TREM-1は膜受容体として機能し、炎症性サイトカイン産生を促進して炎症反応を増強する一方、遊離型TREM-1はdecoy receptorとして機能して敗血症性ショックモデルを保護する。これまでに我々は、マウスマクロファージ系細胞RAW264.7を用いてレポーター解析を行い、マウスTREM-1遺伝子のプロモーター活性に関与する転写因子結合配列について検討した。その結果、CRE (cAMP response element)がプロモーターのbasal activityをpositiveに、NF-kB配列がnegativeに制御すること、一方、AP-1配列がLPS応答に関与することが示唆された。そこで、TREM-1プロモーターに結合する転写因子の同定を試みた。

【結果・考察】
まず、gel shift assayの結果から、C/EBPaがCREに結合し転写に対してpositiveに、NF-kBのp50/p50ホモダイマーがNF-kB配列に結合しnegativeに働くことが示された。さらに、LPS刺激によってAP-1配列に結合するc-fosやc-junが増加することが示された。また、western blot解析から、LPS刺激によってc-fosやc-junの発現レベルが亢進し、リン酸化が誘導されることがわかった。以上の結果から、マクロファージ系細胞でのTREM-1発現において、C/EBPaとp50/p50がbasal activityをpositiveあるいはnegativeに制御すると考えられた。さらに、LPS刺激によりc-fosやc-junの複合体が活性化され、TREM-1発現を誘導すると考えられた。

P-18 エンドトキシンショックモデルマウスのメディエーターに及ぼす抗炎症性脂質resolvinの効果

○村上 泰介1、鈴木 香1、田村弘志2、細田 浩司1、長岡 功1 (1順天堂大・医・生化学・生体防御学講座、2生化学バイオビジネス(株))

【目的】
レゾルビン (resolvin)はw-3脂肪酸であるエイコサペンタエン酸 (EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)由来の抗炎症性脂質メディエーターファミリーである。そのうちの一つであるレゾルビンD1(RvD1)は、zymosan投与による腹膜炎モデル動物における腹腔内への好中球の浸潤などに対する抑制作用があることが報告されており、創傷治癒や炎症性疾患への応用が期待されている。そこで、今回、D-galactosamine (D-gal)誘発エンドトキシンショックモデルマウスへRvD1を投与し、血中HMGB1濃度、TNF-a、IL-6、MCP-1などの血中サイトカイン、肝細胞のアポトーシスについて対照群との比較を行い、RvD1の効果を検討した。

【方法】
マウスに対しD-gal (18 mg)、LPS (25 ng)を腹腔内投与したモデルマウスに、同時にRvD1 (0.1または1 mg)を腹腔内投与し、エンドトキシンショックモデルとした。投与後5時間で心臓採血を行い、血清を調製した。血清サイトカインをcytokine bead array法により、HMGB1をELISA法により測定した。また、肝切片を作成し、肝細胞のアポトーシスをTUNEL法により調べた。

【結果・考察】
D-galおよびLPS投与後、血清中のHMGB1濃度、TNF-a、IL-6、MCP-1、IL-10の濃度が上昇した。RvD1 (1 mg)の投与により、これらのうち、HMGB1およびMCP-1の濃度が有意に抑制された。また、肝細胞のアポトーシスは投与後5時間で顕著であったが、RvD1の投与により抑制傾向が見られた。従って、RvD1は、HMGB1の放出、MCP-1産生を抑制し、肝細胞のアポトーシスを抑制してエンドトキシンショックの病態に保護作用を示す可能性が示唆された。

P-19 腸炎ビブリオO9内毒素リポ多糖(LPS)の糖鎖構造

○一色恭徳、君島寛幸、近藤誠一 (城西大学薬学部病原微生物学講座)

食中毒起因菌として知られる腸炎ビブリオは、13種類O抗原と69種類のK抗原の組み合わせから多様な抗原型が存在する。近年、本菌のO3:K6、O1:K25、O1:KUTおよびO4:K68の特定の抗原型菌株が世界的な広がりを見せている。さらに、これらの菌株は、同一の遺伝子背景を示すことから世界流行株として取り扱われている。従って、本菌の表層抗原の解析は、その意義を増している。我々は、本菌のO抗原を司る内毒素リポ多糖(LPS)の糖鎖構造を解析してきた。これまで、O2、O3、O6、O5、O11およびO12血清型菌株のその構造を明らかとしてきた。本研究では、O3抗原型菌株と共通抗原を有することが知られるO9株のLPS糖鎖構造を解析した。Vibrio parahaemolyticus O9:K44 1423-65株より抽出・精製したLPSは、O-deacylationに次ぐN-deacylationによってlipid A部分の脂肪酸を取り除き、同LPSの全糖鎖(PS)とした。得られたPSの糖組成分析とFAB-MSにおいて、本菌LPSは、4分子のリン酸、2分子のw)?刋タ蓑牒蒹頸闢・ぢ、GlcNおよびGlcA、および、1分子のGlc、GalN、3-deoxy-oct-2-urosonic acid (Kdo)、4-amino-4,6-dideoxy-glucose (6dGlc4N) の10糖で構成されていることが明らかとなった。さらに、PSをHPAECによって精製した後、NMRで解析しその結合様式を明らかとした。以上の結果、O9 LPSはその糖鎖部分に2分子のウロン酸を有することが明らかとなり、これまで明らかとされた他の血清型菌株LPSのそれとは異なる特徴を有していた。本シンポジウムでは、さらに解析を進め腸炎ビブリオO9 LPS糖鎖部の全構造について発表する予定である。