毒素シンポジウム
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第57回毒素シンポジウム若手奨励演題

Y-1 Trehalose dimycolate類似体の免疫賦活作用の解析

○屋比久賢太1 、渡邊直之1 、小田真隆1、永浜政博1 、中野真代2 、山本博文2 、今川 洋2 、井上正久3、瀬津弘順3 、西沢麦夫2 、櫻井 純1 (1徳島文理大学 薬学部 微生物学教室、2 徳島文理大学 薬学部 薬品製造学教室、3徳島文理大学 薬学部 機能形態学教室)

【目的】
結核菌細胞表層糖脂質であるtrehalose-6,6’-dimycolate (TDM)は、マクロファージ (Mφ)活性化作用として免疫賦活を有するが、毒性の強いことが知られている。また、不斉点を持つため合成が難しいという問題がある。そこで、今回、TDMより安全かつ、大量合成が可能な免疫賦活剤を開発するため、33種類のTDM類似体 (TBU)を合成し解析した。

【方法】
Mφの貪食能は、蛍光ビーズの取り込み量、活性酸素産生能については、H2DCFDAを用い解析した。マウスの末梢血中サイトカイン(IL-6、TNF-α、IFN-γ)遊離量は、ELISA法で測定した。

【結果】
33種のTBUをマウス腹腔Mφに作用させ貪食能、及び、活性酸素産生能を測定した結果、Vizantineが最も強いMφ活性化作用を有することが判明した。さらに、Vizantineは、マウス尾静脈投与により強いIL-6、INF-γ遊離作用を示したが、TNF-α遊離作用を示さなかった。そこで、Vizantineをマウスの腹腔に投与24時間後、ウエルシュ菌、または、緑膿菌を腹腔投与したところ、これらの細菌投与による致死は、Vizantineの投与量に依存して抑制された。さらに、緑膿菌感染3時間後、Vizantineを投与した場合、本菌によるマウスの致死率は、Vizantine未投与群と比較して、約50%低下した。次に、FM3A細胞を腹腔に投与したマウス腹水癌モデルに対するVizantineの効果を検討すると、FM3A細胞接種3日後にVizantineを投与した群では、ガン転移、及び、ガン水腫が認められず、すべて生存した。以上の結果から、新規に合成した33種のTBUの中で、Vizantineは、マウスMφ活性化作用、さらに、IL-6、及び、IFN-γ産生能が最も高く、免疫賦活活性の亢進が認められ、さらに、抗細菌、及び、抗腫瘍作用を有していることが判明した。

Y-2 ウエルシュ菌α毒素によるIL-8の遊離とTrkA、及び、GM1の関係

○蕪 道子、小田 真隆、永浜 政博、櫻井 純 (徳島文理大・薬・微生物学教室)

【目的】
ウエルシュ菌によるガス壊疽の原因毒素であるα 毒素は、血液内に移行すると溶血やサイトカインストーム、そして、肝臓や肺への著しい好中球の集積を引き起こす。所属する研究室は、好中球の浸潤に密接に 関与するIL-8に注目し、α毒素処理細胞からのIL-8遊離メカニズムについて解析を行ってきた。また、本毒素による好中球の活性酸素産生作用に三量体 GTP結合タンパク質Giを介した内因性PLCの活性化とチロシンキナーゼ関連受容体であるTrkAの活性化が関係していることを明らかにしてきた。そこ で、α毒素によるIL-8の遊離とTrkAの関係を検討した。

【方法・結果】
TrkA 阻害剤(K252a)及びsiTrkA処理細胞にα毒素を作用させた場合、毒素によるIL-8遊離は有意に抑制された。また、TrkAノックダウン A549細胞への毒素の結合を分析した結果、毒素の結合の有意な低下が認められたことから、本毒素によるIL-8遊離へのTrkAの関与が明らかとなっ た。そこで、Cy3ラベルα毒素とAlexa488ラベル化TrkA抗体の局在を共焦点レーザー顕微鏡で観察したところ、両者の共局在が認められた。次 に、TrkAは、ガングリオシドの一つであるGM1と隣接していることが報告されていることから、GM1の蛍光ラベル体であるBODIPY-GM1と Cy3ラベルα毒素の局在を共焦点レーザー顕微鏡で観察したところ、GM1と本毒素の共局在が認められた。また、ノイラミニダーゼ処理細胞からのIL-8 遊離の抑制が認められたことから、α毒素の細胞への結合にGM1のシアル酸が関与していることが判明した。

【考察】
α毒素は、GM1とTrkAの局在領域を認識し結合後、一連のMAPKシグナルを活性化することによりIL-8遊離を惹起すると推察される。

Y-3 Crucial role of listeriolysin O in caspase-1 activation during Listeria monocytogenes infection

○ Hideki Hara, Kohsuke Tsuchiya, Ikuo Kawamura and Masao Mitsuyama (Department of Microbiology, Kyoto University Graduate School of Medicine, Kyoto, Japan)

Listeriolysin O (LLO), an hly-encoded cytolysin from Listeria monocytogenes (LM), plays an essential role in the entry of this pathogen into the macrophage cytoplasm and is also a key factor in inducing the production of IFN-gamma during the innate immune stage of infection. In this study, we examined the involvement of LLO in the production of IFN-gamma-inducing cytokines, IL-12 and IL-18. Significant levels of IL-12 and IL-18 were produced by macrophages on infection with wild-type LM, whereas an LLO-deficient mutant lacked the ability to induce IL-18 production. Complementation of LLO-deficient mutant with hly completely restored the ability. However, when LLO-deficient mutant was complemented with ilo encoding ivanolysin O (ILO), a cytolysin highly homologous with LLO, such a restoration was not observed, although ILO-expressing LM invaded and multiplied in the macrophage cytoplasm similarly to LLO-expressing LM. Secretion of IL-18 was diminished in macrophages from caspase-1-deficient mice, suggesting the activation of caspase-1 as a key event resulting in IL-18 maturation. Activation of caspase-1 was induced in macrophages infected with LLO-expressing LM but not in those with LLO-deficient mutant. A complete restoration of such an activity could not be observed even after complementation with the ILO gene. These results show that LLO molecule is involved in the activation of caspase-1 which is essential for IL-18 production in infected macrophages. The marked difference between LLO and ILO despite of the similar effect on bacterial escape inside host macrophages implied that some sequence unique to LLO is indispensable for some signaling event resulting in the caspase-1 activation induced by LM.

Y-4 腸炎ビブリオ耐熱性溶血毒の細胞毒性発現には細胞膜ラフトが必要である

○松田重輝1、児玉年央2、岡田奈津実1、本田武司2、飯田哲也1 (1大阪大学微生物病研究所・感染症国際研究センター・ゲノム病原細菌学、2大阪大学微生物病研究所・細菌感染分野)

 我が国における主要な食中毒原因菌である腸炎ビブリオの産生する耐熱性溶血毒(TDH)は、本菌の主要な病原因子である。TDHは生物活性として、赤血球に対する溶血活性や培養細胞に対する細胞毒性、腸管毒性、心臓毒性を示し、特に溶血活性の研究から、TDHは孔形成毒素として作用することが知られている。現在に至るまでTDHの研究はその溶血活性が中心であり、細胞毒性についてはCa2+流入の誘導が報告されているが、その標的因子を含め不明な点が多い。
本研究ではTDHの細胞毒性を阻害する物質を探索し、methyl-b-cyclodextrin(M b CD)がTDHの細胞毒性を顕著に阻害することを見出した。M b CDは細胞膜ラフト(ラフト)を破壊することが知られているので、TDHとラフトとのassociationを検討し、TDHがラフトとassociateしていること、M b CD処理によってラフトが破壊され、TDHのラフトとのassociationが認められなくなること、TDHの1アミノ酸変異体R7(無毒変異体)はラフトとassociateしないことを見出し、TDHの細胞毒性にはラフトとのassociationが必要であることを示した。一方、TDHによる培養細胞のCa2+透過性の上昇および赤血球に対する溶血作用は、M b CDにより阻害されなかった。以上より、TDHの赤血球に対する溶血作用および培養細胞に対するCa2+透過性亢進作用はラフト非依存的であるのに対し、培養細胞に対する細胞毒性はラフト依存的であることが明らかになった。また、細菌由来スフィンゴミエリナーゼ(bSMase)によってTDHの細胞毒性が阻害された。リポソームによるTDHの細胞毒性に対する阻害実験、およびlipid overlayによるスフィンゴミエリンとTDHとのdirect interactionの検討の結果、TDHはスフィンゴミエリン分子を結合の標的にしているわけでないことが示された。次にSMase処理によりTDHのラフトとのassociationへの影響を検討した。100 mU/mLのSMaseで処理し、TDHと反応させた細胞では、ラフトマーカータンパク質はラフト画分より検出されたが、TDHはラフト画分より検出されなかった。このことから、TDHは本研究で使用した程度のSMase濃度で破壊される、SMase-sensitiveなラフトとassociateしている可能性が考えられた。

Y-5 Vibrio mimicusヘモリジンの成熟化に関与する菌体外プロテアーゼ

○水野 環、前原陽子、中尾浩史、三好伸一 (岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科薬学系 衛生微生物化学研究室)

Vibrio mimicusは急性胃腸炎を引き起こす病原ビブリオの一菌種である。この病原菌は、V. mimicus hemolysin(VMH)と称される溶血毒素を産生する。この毒素は溶血活性の他にエンテロトキシン活性を有しており、主要な下痢原因毒素となっている
VMHは分子量84 kDaの前駆体として産生された後、二段階のプロセッシングを経て66 kDaの成熟体へと変換される。すなわち、内膜通過の際にシグナルペプチドが切断され、80 kDaのpro-VMHとなる。その後、菌体外において151番目のアルギニン(Arg151)と152番目のセリン(Ser152)の間で切断され、66 kDaの成熟体へと変換される。しかしながら、この成熟化の過程は不明な点が多い。特に成熟化に関与するプロテアーゼは同定されていない。本研究ではVMHの成熟化に関与するプロテアーゼの同定を行った。
 以前私達は、V. mimicusが産生する金属プロテアーゼ(VMP)は、VMHの成熟化に関与しないことを明らかにした。そこで、VMP遺伝子破壊株を作製し、その培養上清から成熟化に関与するプロテアーゼの精製を行った。その結果、トリプシンの基質に対して特異的な分解活性を示す分子量56 kDaのプロテアーゼが得られた。そして、この酵素のN末端アミノ酸配列を解析したところ、V. cholerae MZO-2株のトリプシン様セリンプロテアーゼと高い相同性を示した。さらに、この新奇プロテアーゼを精製pro-rVMHに作用させた結果、pro-rVMHのArg151 とSer152の間が切断され、成熟体へと変換された。よって、今回精製したプロテアーゼがVMHの成熟化に関与するプロテアーゼであると結論された。

Y-6 Aeromonas sobriaセリンプロテアーゼの構造と基質認識

◯小林秀丈、山中浩泰、岡本敬の介 (広島国際大学 薬学部 分子微生物科学教室)

Aeromonas sobriaはヒトに下痢症を誘発する原因菌としてしばしば分離されている。我々はA. sobriaの培養上清中に見出されるセリンプロテアーゼ (A.sobria serine protease : ASP)が本菌感染症に寄与していると考え、その性状について解析を行った。ASPの基質特異性を解析した結果、Boc-Glu-Lys-Lys-MCAの基質に対して選択的に作用することが明らかになった。また、最近ASPの立体構造を明らかにし、ASPはkexin familyの代表的なプロテアーゼであるkex2と類似した構造を有する事を明らかにした。しかし、ASPはkex2の基質(Boc-Arg-Val-Arg-Arg-MCA)に対する切断活性は弱いことから、ASPとkex2は異なる基質特異性を有することが推察された。そこで、ASPとkex2の活性中心の構造を比較し両者の基質特異性の違いについて検討を行った。
  ASPとkex2の活性中心の構造を比較した結果、両者の構造でいくつか相違点が見つかった。Kex2のS1ポケットは6個のアミノ酸残基で構成され、 Caイオンが配位している。一方、ASPのS1ポケットは4個のアミノ酸残基で構成されているが、Caイオンは配位していない。特に、ASPのS1ポケットのGlu-242の存在とCaイオンが配位していないことは、P1位がArgよりもLysである基質を認識するのに好都合であると推察された。
 さらに、ASPの519位と520位の間にニックが入ったASP (nicked-ASP)を見出した。nicked-ASPのBoc-Glu-Lys-Lys-MCAに対する切断活性は、野生型ASPのそれより上昇していることがわかった。構造解析から、nicked-ASP のS3ポケット付近にニックが入ると、この付近の柔軟性が変化し、低分子の合成基質を受け入れやすくなったために切断活性が上昇したと考えている。今後、この領域に注目して解析を行いASPの基質認識の詳細について明らかにする予定である。

Y-7 エラスチン分解に関与するアエロモナスのメタロプロテアーゼの性状解析

○ 橋栄造,立石亜里紗、安倍武海、中西麻悠,岡本敬の介 (岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 薬学系)

【目的】
アエロモナスは下痢原因細菌としてしばしば分離されるグラム陰性桿菌である。アエロモナスの中でも病原性の強いAeromonas hydrophila、A. sobriaは下痢症に引き続き、皮膚疾患や敗血症などの重篤な感染症を引き起こす事が知られている。本研究では、血管の構成タンパク質であるエラスチンを分解するアエロモナスのメタロプロテアーゼについて解析を試みた。

【方法】
教室保有のアエロモナスをエラスチン含有普通寒天培地に播種後、37℃で培養し、分解環を観察した。また、本菌を普通ブイヨン培地で培養し、その上清のエラスチン分解活性をエラスチン-CONGO REDを基質に用いて測定した。

【結果と考察】
アエロモナスをエラスチン含有寒天培地で培養すると、A. hydrophila は43株中19株がエラスチン分解活性を示したが、A. sobria、A. caviae、A. trotaはいずれも活性を示さなかった。そこで、A. hydrophilaメタロプロテアーゼ欠損株を作製し解析すると、欠損株は野生株に比べ、エラスチン分解活性は低下した。また、野生株を液体培地で12、24時間培養すると、培養上清のエラスチン分解活性は12時間に比べ、24時間では低下した。これら培養上清中のメタロプロテアーゼタンパク質をウェスタンブロットで検出すると安定的な34kDa型メタロプロテアーゼは同程度存在していたが、プロセシングを受ける前の前駆体は培養12時間に比べ、24時間では減少していた。以上の結果より、A. hydrophilaの産生するメタロプロテアーゼは前駆体がエラスチン分解活性に重要であると考えられる。 そこで、エラスチン分解性株と非分解性株とでメタロプロテアーゼ遺伝子の塩基配列を決定し、推定アミノ酸配列を比べると、プロセシングで切断されるC末端領域に塩基置換が多く存在する事が分かった。

Y-8 LPSで誘導される血管内皮細胞のアポトーシスに対するヒト抗菌ペプチドLL-37の抑制効果

○鈴木 香1、桑原 京子2、射場 敏明3、山倉 文幸4、田村 弘志5、村上 泰介1、細田 浩司1、長岡 功1 (1:順天堂大・医・生化学・生体防御学 2:順天堂大・医・微生物学 3:順天堂大・医・救急・災害医学 4:順天堂大・医療看護 5:生化学バイオビジネス(株))

[目的]
敗血症は細菌感染が重症化した全身性の炎症反応症候群である。初期の高サイトカイン血症に続いて、肺や肝臓で血管内皮細胞がアポトーシスを起こすと、末梢循環が障害されて臓器機能障害を合併する。一方、グラム陰性菌の膜成分lipopolysaccharide (LPS)が血管内皮細胞のアポトーシスを誘導することが知られている。先に我々は、cathelicidinファミリーのヒト抗菌ペプチドLL-37がLPSに直接結合して、LPSで誘導される単球系細胞からの炎症性サイトカイン産生を抑制することを示した。しかし、LPSによる血管内皮細胞のアポトーシスに対するLL-37の効果は明らかでない。そこで本研究では、LPSで誘導される血管内皮細胞のアポトーシスに対するLL-37の効果を、培養細胞を用いて解析した。

[方法]
ヒト肺由来微小血管内皮細胞 (HMVEC-L)にLPSとcycloheximideを添加してアポトーシスを誘導した。アポトーシスはAnnexinV/PI染色やTUNEL染色など複数の指標によって判定した。また、この系にLL-37を添加してアポトーシスに対する効果を検討した。さらに、蛍光標識したLPSを用いて、HMVEC-LへのLPSの結合を解析した。

[結果・考察]
LPSとcycloheximideによって、約40%のHMVEC-Lがアポトーシスによる細胞死を起こした。これに対してLL-37はアポトーシスを有意に抑制した。また、LL-37はLPSのHMVEC-Lへの結合を阻害した。さらに、CD14およびTLR4の中和抗体を用いることにより、LPSで誘導されるアポトーシスとLPSの結合が抑えられた。これらの結果から、抗菌ペプチドLL-37は血管内皮細胞へのLPSの結合を阻害することで、CD14やTLR4を介したアポトーシスを抑制すると考えられた。

Y-9 川崎病患児由来Streptococcus mitis Nm-65株が産生する2種類のコレステロール依存性細胞溶解毒素遺伝子の発現とその病原性への寄与

○ 山本泰裕1、田端厚之1、友安俊文1、弘田克彦2、大國寿士3、長宗秀明 (1:徳島大院・STS・ライフシステム、2:徳島大・院・HBS・口腔微生物学、3:メデカジャパンラボラトリー)

【序論】
川崎病患児から分離されたStreptococcus mitis(SM)Nm-65株は血小板凝集活性を示す毒素Streptococcus mitis-derived human platelet aggregation factor(Sm-hPAF)を分泌し、既にこの毒素はコレステロール依存性細胞溶解毒素(CDC)に属することが明らかとなっている。ところで近年、SMの近縁種Streptococcus pneumoniae(SP)が産生するCDCのpneumolysin(PLY)と高い相同性を示すmitilysin(MLY)の存在が、一部のSM臨床株で報告された。そこでNm-65株を含む19株のSMでこれら毒素遺伝子を探索した結果、Nm-65株にのみmly及びsm-hpaf遺伝子の存在が見出され、Nm-65株は異なる2種類のCDCを合わせ持つ非常に興味深い株であることが判明した。本研究では、Nm-65株での両遺伝子の発現と、その翻訳産物の病原性への寄与につき検討を行った。

【結果と考察】
Nm-65株のmly及びsm-hpaf遺伝子の染色体上での位置関係について、ゲノムプロジェクト株S. mitis NCTC 12261と比較した結果、両遺伝子は染色体上の異なる位置に存在していた。また、mly遺伝子はその近傍の配列と共に、sm-hpaf遺伝子はほぼ単独で、Nm-65株へ伝達されたことが示唆された。sm-hpaf遺伝子の転写調節領域には、典型的プロモーター構造に加えてCcpAカタボライトリプレッサーの認識配列であるcreの相同配列が確認されたが、mly遺伝子ではそのような明確な調節構造は確認できなかった。さらに抗体による毒素中和試験等の結果から、両CDCの内でSm-hPAFがNm-65株の病原性に重要なことが示唆され、カタボライトリプレッションの影響も含めてsm-hpaf遺伝子の発現調節機構を明らかにすることは、Nm-65株の病原性を理解する上で重要な知見を与えるものと考えられた。現在、さらにその詳細につき検討を行っている。

Y-10 Antidote active compound against snake venom from Argusia argentea

◯ニン・タンダ・アウン,高谷芳明,丹羽正武 (名城大学薬学部 医薬資源化学研究室)

Aim of the study: Argusia argentea (family: Boraginaceae) is locally used in Okinawa as an antidote for jellyfish toxin and sea snakes venom poisoning. The aim of the present work was isolation and identification of the active compound (Rosmarinic acid) from Argusia argentea, which was responsible for snake venom neutralization.

Method: The crude methanol extract of the twigs and leaves of Argusia argentea was fractionated with ethyl acetate, n-butanol and water successively. An organic acid, rosmarinic acid was isolated and purified from the ethyl acetate fraction by silica gel column chromatography and HPLC. Snake venom neutralization activities of the active compound were examined by pharmacological assay methods.

Results: It was observed that the pure compound effectively inhibited snake venom induced actions of some crude venoms (Trimeresurus flavoviridis, Crotalus atrox, Gloydius blomhoffii and Bitis areitans) as well as purified toxins (HTb, bilitoxin-2, HT-1 and Ac1-proteinase). It was found to markedly neutralize venom-induced fibrinogenolytic, cytotoxic and digestion of type IV collagen activity. Moreover, although hemorrhage and neutrophil infiltrations were seen in pathology sections taken from mouse thigh resected 24 h after Trimeresurus flavoviridis venom was administered to the thigh, these hemorrhage and neutrophil infiltrations were inhibited by rosmarinic acid.

Conclusion: This is the first report of rosmarnic acid from Argusia argentea that protected snake venom induced hemorrhagic, fibrinogenolytic, cytotoxic, digestion of type IV collagen activity, and hemorrhage and neutrophil infiltrations on thigh muscle. The observations confirmed that RA possessed potent snake venom neutralising properties and could be used in the future as potent antidote compound for snake envenoming.

Y-11 ボツリヌスD/Cモザイク神経毒素の特性解析

○中村佳司1,幸田知子1,塚本健太郎2,向本雅郁1,小崎俊司1 (1:大阪府立大・生命環境・獣医感染症 2:藤田保衛大・医・微生物)

家畜・家禽のボツリヌス症の原因として知られているC およびD型ボツリヌス菌の中には、C・Dモザイク毒素 (BoNT/DCまたはBoNT/CD)を産生する株が存在する。BoNT/DCは、D型神経毒素 (BoNT/D)のC末端から1/3のアミノ酸配列がC型神経毒素 (BoNT/C)と相同性の高い構造をもつ。今回精製BoNT/DCの性状を既存のC、D型神経毒素と比較し、BoNT/DCに特徴的な性状を明らかにし たので報告する。BoNT/DCのマウスに対する致死活性は全ての型の神経毒素の中で最も高いが、動物種による感受性の違いを調べるため、BoNT/DC のラットに対する致死活性を測定した。BoNT/C、BoNT/CD、BoNT/Dのマウスとラットに対する体重あたりの毒性はほぼ同程度であったが、 BoNT/DCのラットに対する致死活性はマウスと比較して著しく低かった。ガングリオシドGM3合成酵素を欠損したマウス (KOマウス)を用いてBoNT/DCの毒性発現におけるガングリオシドの影響を調べた。KOマウスはBoNT/Cに耐性を示したのに対し、 BoNT/DCでは野生型に比べて致死時間が遅延した。TLC免疫染色法により、BoNT/CがガングリオシドGD1bとGT1bに、BoNT/Dが Phosphatidylethanolamine (PE)に結合する。同様の方法で、BoNT/DCはガングリオシドGM1aとGD1aおよびPEに結合することが分かった。これらの結果は、 BoNT/DCがBoNT/CやBoNT/Dとは異なる特性を持っていることを示唆している。現在BoNT/DCの毒性発現機構を明らかにするため、 BoNT/CやBoNT/Dと詳細に比較しながら解析を行っている。

Y-12 Clostridium perfringens enterotoxinを利用した非侵襲性投与法の開発

○高橋梓1、松久幸司1、各務洋平1、内田博司2、花田雄志2、近藤昌夫1、八木清仁11阪大院薬,2アスビオファーマ株式会社)

 昨今のゲノム・プロテオーム創薬の進展に伴い、バイオ医薬品(ペプチド、蛋白質、核酸)の創出が加速している。如何なる医薬品も生体内への吸収に際しては上 皮細胞層の透過過程が不可避であるものの、元来上皮細胞層は生体内外を隔てるバリアとして機能しており、バイオ医薬品の透過性は著しく低く非侵襲性の注射 による投与を余儀なくされているものが多いのが現状である。

 Clostridium perfringens enterotoxin (CPE)は、腸管粘膜上のCPE受容体に結合し、CPE複合体が細胞膜に穴を開けることで細胞を破壊し、下痢を引き起こすことが知られている。1999 年に、CPE受容体がTJ構成蛋白質claudin(CL)であること、CPEのC末断片(C-CPE)が細胞傷害性を伴わずにTJバリアを阻害すること が報告された。これらの知見は、CLバリア制御を利用した新たな薬物送達法開発の可能性を示唆している。

 そこで、C- CPEをCL modulatorのモデル分子として用い、CLを利用した粘膜吸収促進の可否を検証した。まず、モデル薬物として分子量4000のデキストラン(FD- 4)を使用し、ラット腸管からの吸収促進効果を検討したところ、C-CPEの添加濃度依存的に血漿中FD-4濃度の上昇が観察され、臨床応用されている吸 収促進剤(カプリン酸ナトリウム)の400倍もの吸収促進活性を示していた。さらに、ペプチド医薬品(hPTH)の粘膜吸収促進効果を解析したところ、C -CPEを前処理することでhPTHの経鼻、経肺、腸管吸収促進効果が認められた。さらに、C-CPEのN末欠損体とhPTHの同時投与では、いずれの粘 膜面においてもhPTHの吸収促進が観察された。

以上、現在までに、CL modulator(C-CPE)を用いた非侵襲性投与法創出の可能性を見出した。今後は、これらの成果を有効活用し、druggable CL modulatorの作製を進めていく予定である。