毒素シンポジウム
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第58回毒素シンポジウム若手奨励演題

Y-1 腸管出血性大腸菌の産生するSubtilase cytotoxin(SubAB)の細胞内侵入機序の解析

○永澤 明佳1.2 八尋 錦之助2 茂谷 久子1 岩瀬 博太郎1 野田 公俊2 (千葉大・医・法医1・病原分子制御2

[背景]
Subtilase cytotoxin(SubAB)は腸管出血性大腸菌(EHEC)により産生されるAB5 毒素である。SubAB のB サブユニットが標的細胞膜上の受容体に結合した後、エンドサイトーシスによりSubAB 全体が細胞内に取り込まれる。そして、A サブユニットがER に存在するシャペロンタンパク質BiPを基質として切断する。その結果、unfolding protein の蓄積によるER ストレスにより細胞死を誘導すると考えられている。これまでにVero 細胞におけるSubABの取り込みがクラスリン経路で起こることが報告されている(Paton et al.,2008)。しかしながら、ヒト細胞においては取り込みのメカニズムに関する報告は無い。本研究では、SubAB に感受性を持つHeLa 細胞を用い、SubAB が受容体に結合した後、どのような細胞内侵入機構をとるのかを明らかにすることを目的とした。

[方法]
使用薬剤は、エン ドサイトーシスを阻害する種々の阻害剤、細胞内カルシウムに対する阻害剤、PKC isoform に対する各種阻害剤、更にカルモジュリンアンタゴニスト等である。これらの薬剤でHeLa 細胞を前処理した後、SubAB を添加し、経時的に細胞を回収し、SubAB の細胞内侵入を調べた。SubAB の細胞内への取り込みは、Western blotting によりBiP の切断パターンを指標にして評価する方法と、NHS-S-S-ビオチン標識したSubAB を用い、アビジン-HRP によるELISA による方法で解析した。

[結果と考察]
SubAB のヒト細胞内への取り込みにはクラスリン経路だけではなく、マイクロピノサイトーシスも関与していることを明らかにした。BAPTH-AM処理により BiP 切断が阻害されたことから、細胞内カルシウムがSubAB の細胞内輸送に重要であることがわかった。PKCδとカルモジュリンの阻害により、BiP の切断が抑制されたことから,SubAB は細胞内に侵入後、初期エンドソームを経由してER に到達し、BiP を切断していることが推察された。

Y-2 腸管出血性大腸菌が産生する新規SubAB トキシンによるNO 産生抑制機構の解明

○津々木博康、八尋錦之助、清水健、野田公俊 (千葉大学大学院 医学研究院 病原分子制御学)

[背景と目的]
Subtilase Cytotoxin(SubAB)は溶血性尿毒症症候群を引き起こした腸管出血性大腸菌(EHEC) O113:H21 株が産生する新規の毒素として発見され、その作用として小胞体(ER)に存在するシャペロン蛋白質BiP を切断することで細胞にER ストレスを与え、細胞死を誘導することが報告された。グラム陰性菌の細胞壁外膜を構成するリポ多糖(LPS)やリンパ球から産生されるサイトカインにより マクロファージが活性化されると、誘導型一酸化窒素(NO)合成酵素(iNOS)が誘導され、高濃度のNO が産生される。NO は宿主の自然免疫系において強力な殺菌剤となることが知られており、病原性細菌の感染や病原性発揮に対してNO が宿主の感染防御反応として重要であることが示唆されている。我々は、SubAB がLPS やサイトカインで刺激したマクロファージからのNO 産生を抑制することを見出した。本研究の目的は、SubABによるマクロファージからのNO 産生抑制機構を解明することである。

[方法]
SubAB を作用させたマウスマクロファージ様細胞RAW264.7 をLPS やIFN-gで刺激した。NO 産生能を測定するため、培養上清中のNO の代謝物である亜硝酸を定量した。iNOS の発現はイムノブロッティングとRT-PCR により調べた。

[結果と考察]
LPS およびIFN-gで刺激したRAW264.7 において、SubAB が培養上清中の亜硝酸量を低下させたことから、SubAB がNO 産生を抑制することが明らかとなった。イムノブロッティングの結果、LPS によって誘導されたiNOS の発現は、SubAB により抑制された。さらにRT-PCR の結果、SubABはLPS刺激により合成されるiNOSmRNAを減少させた。以上の結果から、SubABはRAW264.7 において誘導されるiNOS の発現を抑制することで、NO 産生を低下させることが明らかとなった。現在、iNOS の発現抑制機構について解析を進めている。

Y-3 血管内皮細胞アポトーシス誘導因子VAP1 の基質認識機構の解析

○鈴木雄士、荒木聡彦、澤田均 (名古屋大学大学院海洋発生生化学研究室)

 出血性ヘビ毒による出血の責任毒素は出血性メタロプロテアーゼである が、その主要な標的が何なのかは明らかになっていない。出血性ヘビ毒による出血には、血管壁の基底膜の破壊が重要と考えられている。しかしそれと同時に、 その内側に存在する血管内皮細胞の破壊も必要であると考えられる。しかし、出血性ヘビ毒がどのように内皮細胞に作用し、血管内皮細胞の破壊を行っているか は未だに不明である。
 当研究室において現在までに数種類の天然精製基質と組み換えタンパク質を利用し、Crotalus Atrox 由来のメタロプロテアーゼ、VAP1 の基質特異性を調査した。この結果、天然精製基質ではP2’がバリンという共通点があったが、 作成した組み換えタンパク質ではその傾向が見られなかった。今回我々はさらに調査を進め、種々の組み換えタンパク質を作製し、切断部位の調査を進めた。
 基質とする組換えタンパク質は、Human Placenta cDNA Library をtemplate としてPCRを行い、発現ベクターpGEX-4T-1 とpET-32a (+)を用いて、N末端側にGST タグを、C末端側にHis タグを付加させたものを数種類作製した。また、thrombin を添加し、室温でインキュベートすることでGST タグを切断したものも作製した。これらのタンパク質をVAP1 と混合、37℃においてインキュベートし、切断を行った。その後、SDS-PAGEにより、タンパク質が切断されているかを確認した。
今回の実験に用いた 種々の組み換えタンパク質の中でVAP1が高感度に切断する組み換えタンパク質を見出した。また、このタンパク質の切断部位を調査したところ、P2’部位 はバリンであった。これらの結果をもとに切断の条件に関する考察を行った。

Y-4 コレラ菌由来のADP-リボシルトランスフェラーゼ活性を有するCholix toxin が引き起こすアポトーシスシグナル伝達機構の解析

○小倉 康平1, 八尋 錦之助1, 山崎 伸二2, 野田 公俊1 (1 千葉大・医学研究院・ 病原分子制御学, 2 大阪府立大院・生命環境・獣医国際防疫学)

【目的】
Vibrio cholerae が産生するCholix toxin (Cholix)は、ADP-リボシルトランスフェラーゼ活性を有するため、同活性を持つDiphtheria toxin やPseudomonas Exotoxin A と同じファミリーに属している。Cholix は標的細胞内に侵入後、タンパク質伸長因子eEF2 をADP-リボシル化してタンパク質合成を阻害し、さらにアポトーシスを引き起こす。本研究では、HeLa 細胞に対してCholix が引き起こすアポトーシスシグナル伝達機構を解析する。

【結果と考察】
Cholix を作用させたHeLa 細胞では、カスパーゼの活性化、チトクロームc の細胞質への放出等が認められた。Cholix 処理により、Bcl-2 ファミリータンパク質のBak とBax の特異的な構造変化、ミトコンドリア外膜上での会合体の形成が促された。Bak/BaxのsiRNA遺伝子導入により発現を抑制した細胞では、チトクロー ムc の放出ならびにカスパーゼ7 の活性化が抑制されたが、カスパーゼ3 と9 の活性化は保持されたままで、Cholix の持つ細胞致死活性は消失しなかった。しかし、カスパーゼ阻害剤(Z-VAD-fmk)の添加によりCholix が示す致死活性が完全に消失したことから、この致死活性はカスパーゼ依存的であることが明らかになった。カスパーゼ8 特異的な阻害剤による処理は、チトクロームc の放出だけでなくカスパーゼ3、7、ならびに9 の活性化を抑制した。またカスパーゼ4特異的な阻 害剤の処理は、Cholixによるカスパーゼ8の活性化を抑制し、さらに致死活性を濃度依存的に減少させた。

以上の結果から、Cholixによるアポトー シスは、カスパーゼ4 によるカスパーゼ8 の活性化が起点となることが推察された。またこれらのカスパーゼの下流では、ミトコンドリア外膜上でのBak/Bax 会合体形成により惹起されるチトクロームc 放出に伴うカスパーゼの活性化経路、ならびにミトコンドリアからのシグナルを介さないカスパーゼ3、7、及び9の活性化経路といった、ミトコンドリア依存 的ならびに非依存的なシグナル伝達が並行して引き起こされていることが示唆された。

Y-5 ハブ毒C 型レクチン様タンパク質およびセリンプロテアーゼアイソザイムの網羅的クローニングとハイスループットなリコンビナント発現系の構築

澤田麻貴1,○松田陽平1,渡辺瑞樹1,村本光二1,大野素徳2,小川智久1 (1 東北大学・院・生命科学,2 崇城大学・生物生命)

 ヘビ毒中には様々な生理活性を示す多様なタンパク質やペプチドの毒成分が含まれており、その多様性と特異性の高さから、医薬やそのリード化合物としての利 用が期待される。これまで多くのヘビ毒成分の構造と機能が明らかになっているが、微量成分のため未知の機能を持つタンパク質も多く存在する。また、近年ヘ ビ毒のトランスクリプトーム解析等により微量成分の構造は明らかになりつつあるが、機能解析にはリコンビナント発現系の構築が重要となる。そこで本研究で は、微量成分を含むヘビ毒タンパク質cDNAの網羅的クローニングと同時に、大腸菌によるリコンビナント発現系を構築することを目的とした。
 今回、血液凝固系因子や血小板受容体に特異的に作用するヘビ毒C 型レクチン様タンパク質(CTLP)およびセリンプロテアーゼ(SP)群について、ハブ毒腺由来cDNA の網羅的クローニングとハイスループットなリコンビナント発現系の構築を試みた。ヘビ毒アイソザイムは、加速進化により翻訳領域ではアミノ酸置換を伴う塩 基置換が大きいのに対して、非翻訳領域では保存されている。そこでCTLP とSP それぞれの多様なタンパク質群をコードするcDNA の開始コドンおよび終止コドンを含む非翻訳領域配列に共通のプライマーを作成し、網羅的にCTLP とSP のクローニングを行うと同時にN末端側にアナゴガレクチン、ConII タグを付加することでリコンビナント発現系にもなるようクローニング/発現ベクターを構築した。
その結果、CTLP では40クローンから既知のフラボセチンAのA鎖,B鎖のほか、8種の新規CTLP およびレクチンを含む11種の配列が得られた。また、いずれもConII タグとの融合タンパク質として可溶性画分に発現することができた。現在、ConII タグを利用したアフィニティー精製後、CTLPヘテロ二量体の再構築についても検討を行っている。SP の結果と併せて報告する。

Y-6 B 型ボツリヌスHA とE-cadherin との相互作用についての解析

○菅原 庸、松村 拓大、藤永 由佳子 (大阪大学微生物病研究所 感染症国際研究センター 感染細胞生物学研究グループ)

ボ ツリヌス毒素はグラム陽性偏性嫌気性細菌Clostridium botulinum などが産生するタンパク質性の神経毒であり、ヒトや家畜・鳥などに、弛緩性の麻痺を特徴とするボツリヌス中毒を引き起こす。本毒素はA〜G 型の7 つの血清型に分類され、A,B,E,F 型の毒素はヒトや家畜に中毒を引き起こす一方で、C,D 型についてはウシなどの家畜に対しては中毒を起こすものの、ヒトでの症例は極めてまれである。ヒトでのボツリヌス症は主に毒素の経口摂取によるものであり (食餌性ボツリヌス症)、その発症には、少なくとも神経毒素が消化管上皮を通過することが必須である。しかしながら、分子量700kDa に及ぶ巨大なタンパク質複合体である本毒素がどのように上皮を通過するかについては不明な点が多い。
我々は最近になって、B 型毒素複合体の無毒成分のひとつであるHemagglutinin (HA) が、上皮細胞間バリアを破壊する活性を有することを新たに見出し、この活性により神経毒素の腸管吸収が促進されうるということを報告した。本研究では、 HA と相互作用する分子としてE-cadherin を同定し、HA による上皮細胞間バリア破壊との関わりについて解析を行った。興味深いことに、HA とE-cadherin の相互作用には動物種間で特異性があり、B 型HA は、ヒト、マウス、ウシのE-cadherin には相互作用したが、ラット、ニワトリのE-cadherin とは相互作用しなかった。ラットとニワトリについては、B 型神経毒素に対して感受性が低いことが知られており、HA による上皮細胞間バリア破壊活性がボツリヌス中毒発症へ寄与することが示唆された。現在、組換え体HA 複合体、及びHA-E-cadherin 共結晶の構造解析を目指して条件検討を行っている。

Y-7 Genetic diversity and functional studies on cholix exotoxin, an ADP-ribosylating factor prevalent in heterogenic Vibrio cholerae strains

○Awasthi S. Prasad1、Masahiro Asakura1、Nityananda Chowdhury1、Sucharit B. Neogi1、Atsushi Hinenoya1、 Shinji Yamasaki1 (1Department of Veterinary Science, Graduate School of Life and Environmental Sciences, Osaka Prefecture University)

Till date >200 serogroups of Vibrio cholerae have been reported based on the surface ‘O’antigen. V. cholerae strains which express O1 or O139 surface antigens and possess two major virulent genes for cholera toxin (ctx) and toxin-coregulated pilus (tcp) are considered to be the causative agent of cholera. Strains with ‘O’ antigens other than O1 or O139 are commonly referred to as “non-O1/non-O139”. Majority of the non-O1/non-O139 V. cholerae do not carry ctx and tcp genes and hence, they are said to be non-toxigenic. However, some strains lacking both the ctx and tcp genes have been isolated from patients with gastroenteritis and extra intestinal infections. The major virulence determinants in non-O1/non-O139 strains are not well established although Hemolysin (hly), type III secretion system (T3SS), type VI secretion system (T6SS), heat-stable enterotoxin (stn), Hemagglutinin protease (hap), Zonula Occludens Toxin (zot) are known. Recently, a novel exotoxin named cholix possessing ADP-ribosyl transferase activity, similar to exotoxin A (ExoA) from Pseudomonas aeruginosa and Diphtheria toxin (DT) from Corynebacterium diphtheriae, has been identified in Vibrio cholerae non-O1/non-O139 strains. However, its prevalence and genetic diversity are not yet well understood. The chxA gene encodes a 666 amino acid (aa) residue protein. Cholix toxin consists of three structural domains, I to III. The toxin was found to be active against mammalian cells (IC50 4.6±0.4ng/ml) and crustaceans (LD50: 10±2!g/ml).
The intent of the present study was to screen a large number of V. cholerae strains for the presence of chxA gene and analyze its diversity and to demonstrate that cholix toxin could be an important virulence factor for non-O1/non-O139 V. cholerae strains. Screening of a large population of V. cholerae strains (n = 766) revealed that it was significantly present in non-O1/non-O139 strains (27%; 53 out of 196) and almost negligible but at least present in one O1 out of 486 (0.20%) strains. However, chxA gene was not found in any O139 strains tested (n = 84). Sequencing of complete chxA gene from V. cholerae strains (n = 54) generated 30 groups, which could be merged into 3 major sequence clusters indicating extensive genetic diversity of chxA gene. We cloned some of these diverse chxA genes, and evaluated their cytotoxicity on different mammalian cell lines. Cytotoxicity assay with recombinant cholix toxins having significant genetic diversity at their receptor binding domains showed diverse effect on the same cell line as well as a common effect on the other cell lines used. The findings illustrates for the first time that there are at least three variants of the cholix toxin, here referred to as ChxAI, ChxAII and ChxAIII with significant sequence diversities.

Y-8 Aeromonas trota の産生する病原因子に関する研究

○橋栄造1、野村美枝1、尾崎晴香1、藤井儀夫2、岡本敬の介11岡山大学大学院医歯薬学総合研究科・薬学系、2横浜薬科大学臨床薬学科機能形態学研究室)

【目的】
Aeromonas は様々な水環境に常在するグラム陰性桿菌で、しばしば下痢を引き起こす。アエロモナスの中でも毒性の強いA. sobriaA. hydrophila に関しては毒素や病原性状について解析が進んでいるが、これら菌種以外の下痢原因菌であるA. caviaeA. trota の性状解析はあまり進んでいない。本研究では、A. trota の産生する毒素として溶血毒とプロテアーゼに関して性状解析を行ったので報告する。

【方法】
A. trota を血液寒天培地、およびスキムミルク寒天培地で培養し、生じる溶血環、分解環を観察した。また、A. trota を普通ブイヨン培地で振とう培養後、培養液を遠心し、培養上清を得た。得られた培養上清の羊赤血球に対する溶血活性、アゾカゼインに対するプロテアーゼ活性を測定した。

【結果と考察】
教室保存のA. trota を血液寒天培地で培養すると、培養24時間では溶血環は現れないが、48 時間すると菌周辺に溶血環を示した。しかし、A. trota を液体培地で培養した培養上清では顕著な溶血活性は現れなかった。以上の結果より、A. trota の溶血毒は不安定で分解を受けやすいと推測される。A. trota 701 株の生菌をマウス腸管に投与すると液体貯留を生じたが、生菌と同時に抗溶血毒抗血清を一緒に投与すると、液体貯留は抑制された。従って、不安定なA. trota の溶血毒も本菌の主要な下痢毒であると考えられる。
 次に、A. trota のプロテアーゼに関して解析を行った。A. trota をスキムミルク普通寒天培地で培養すると24 時間で多くの株が透明環を形成した。しかし、A. trota を普通液体培地で37℃で培養しても培養上清にプロテアーゼ活性は現れなかった。一方、25℃で培養した培養上清には顕著なプロテアーゼ活性が検出され た。このプロテアーゼ活性はPMSF で活性が阻害された事から、セリンプロテアーゼと推測される。現在、このプロテアーゼの精製を進めている。

Y-9 Clostridium perfringens enterotoxin を利用したドラッグデリバリーシステムの開発

○松久幸司、橋梓、角谷秀樹、佐伯理恵、渡利彰浩、近藤昌夫、八木清仁 (阪大院薬)

上皮細胞は、悪性腫瘍の90%が上皮由来であること、生体内外を隔てておりインフルエンザウイルスやエイズウイルスなど多くの病原体の侵入門戸となっていることから、癌治療法や感染症予防ワクチン開発のターゲットとして注目されている。
 近年、発現や機能に組織特異性を有するtight junction 構成蛋白質、claudin(CL)の発見に端を発した上皮細胞生物学の進展により、12 種類あまりの癌でCL の発現異常が生じていること、粘膜免疫組織を覆う上皮細胞にCL が高発現していることが報告され、CL を標的とした癌治療法・粘膜ワクチン開発の可能性が示唆されている。しかしながら、CL は抗原性が低い上に立体構造が解析されていないためにbinder の開発は立ち遅れており、CLを標的とした創薬研究は進展していない。
 Clostridium perfringens enterotoxin (CPE)はヒトにおける食中毒の原因となっている。1999 年にCPE の受容体がCL-4 であること、CPE のC 末受容体結合領域(C-CPE)がCL-3、-4 binder であることが示され、C-CPE を利用した創薬の可能性が示唆された。そこで、C-CPE をCL binder のモデル分子として利用し、CL を標的とした癌ターゲティング法、粘膜ワクチンの創出を試みた。C-CPE と蛋白合成阻害因子(PSIF)との融合蛋白質、C-CPE とモデル抗原(OVA:卵白アルブミン)の融合蛋白質を作製し、抗癌活性および粘膜ワクチン活性を解析したところ、C-CPE-PSIF を投与することで抗癌活性、OVA-C-CPE を経鼻投与することでOVA 特異的な免疫応答が観察された。C-CPE のCL 結合性を消失させることでいずれの活性も消失したことから、C-CPE を利用したCL 指向性ドラッグデリバリーシステム開発の可能性が示唆される。