毒素シンポジウム
トップページ

第59回毒素シンポジウムポスター演題

P-1 Study on the region of listeriolysin O responsible for caspase-1 activation in macrophages infected with Listeria monocytogenes

○Hideki Hara、Kohsuke Tsuchiya、Ikuo Kawamura、Masao Mitsuyama (Department of Microbiology, Kyoto University Graduate School of Medicine)

 Listeriolysin O (LLO) and ivanolysin O (ILO) are cholesterol-dependent cytolysins produced by Listeria monocytogenes (LM) and L. ivanovii, respectively. Both cytolysins play an essential role in the escape of bacteria from the phagosome into the cytoplasm of infected macrophages. On the other hand, we have found that LLO but not ILO exhibits the ability to induce activation of inflammasome followed by caspase-1 activation and resulting macrophage death. To investigate the region of LLO responsible for the inflammasome activation, we constructed LM mutants producing the domain 1-3 or the domain 4 of LLO on an ILO-producing LM (ILO-LM) background. Activation of caspase-1 was observed when macrophages were infected with ILO-LM producing the domain 1-3 of LLO but not with that producing the domain 4 fragment, suggesting the requirement of domain 1-3 of LLO for the induction of inflammasome activation. To narrow down the essential region of LLO, we constructed a panel of LM mutants producing chimeric cytolysins in which various portion of LLO was replaced with the homologous region of ILO. Substitution of portions of domain 1 and 2 did not affect the ability for caspase-1 activation, however, a significant reduction of the ability was observed when part of domain 3 was substituted. These findings suggested that the domain 3 of LLO is essential for the caspase-1 activation.

P-2 マクロファージ系細胞のピロトーシスに対する生体防御ペプチドLL-37の作用

○胡 忠双, 村上 泰介, 鈴木 香, 細田浩司, 田村 弘志, 長岡 功 (順天堂大学大学院医学研究科生化学・生体防御学)

目的
ピロトーシス(pyroptosis) はマクロファージ系細胞において見られるcaspase 1依存的なプログラム細胞死であり、inflammasomeの形成とIL-1βの放出をともなう。今までに、グラム陰性菌のLPSが細胞膜レセプター CD14/TLR4に結合して、caspase 1とIL-1βの発現を誘導すること、また、ATPがLPSで前処理した細胞のピロトーシス誘導することが知られている。我々は殺菌ペプチドLL-37が LPSと結合して、LPSの作用を中和させることをすでに報告している。そこで本研究では、LPS/ATP刺激によるマクロファージ系細胞のピロトーシス に対するLL-37の作用について検討した。 実験方法:マウスマクロファージ様細胞株J774細胞をLL-37存在下あるいは非存在下、LPSで4時間前処理した後に、ATPで細胞を刺激した。培養上清はLDH(細胞死)とIL-1βの測定に用いた。また、活性化されたcaspase 1を蛍光標識した阻害剤を用いてFACSで解析した。
結果と結論
LPSで前処理したJ774細胞はATP刺激によってIL-1βとLDHの放出をおこし、これらの反応はcaspase 1阻害剤Ac-YVAD-CHOによって抑制された。興味深いことに、LL-37はLPS/ATP刺激によるIL-1βの放出とcaspase 1の活性化を抑制し、さらに、LDHの放出を部分的に抑制した。このようにLL-37はLPS/ATP刺激によるJ774細胞のピロトーシス (caspase 1の活性化とIL-1βの放出をともなう細胞死)を抑制したが、その機序にLL-37のLPS作用が関与することが考えられた。

P-3 神経分化したP19細胞に対するボツリヌス神経毒素の感受性について

○塚本健太郎1、有満秀幸1、越智定幸1、中村佳司2、幸田知子2、小崎俊司2、辻 孝雄11藤田保健衛生大学医学部微生物学講座, 2大阪府立大学大学院生命環境科学研究科獣医感染症学教室)

 ボツリヌス神経毒素はA からG型に分類され(BoNT/A-G)、神経終末に作用して弛緩性麻痺を引き起こす。毒素の作用機序解明のために、細胞レベルでの解析が不可欠である が、BoNTに高い感受性を示す有用な細胞株はいまだ確立されていない。本研究では、神経細胞に分化誘導したP19細胞がBoNTに対して高い感受性を示 すことを見出し、毒素感受性細胞としてよく用いられてきた初代培養海馬神経細胞及びマウス神経芽細胞腫由来のNeuro2a細胞と毒素に対する感受性につ いて比較検討を行った。BoNT/C或いはBoNT/DCで細胞を処理し、細胞内基質であるSyntaxin-1、SNAP-25、VAMP-2の切断を 調べたところ、P19細胞内のこれら基質は海馬神経細胞内のものと同程度切断されていたが、Neuro2a細胞内の基質は全く切断されなかった。また、受容体結合領域であるHC蛋白の細胞内への取り込みをみた結果、いずれのHC蛋白もP19細胞と海馬神経細胞内には取り込まれたが、Neuro2a細胞にはほとんど取り込まれなかった。これらのことより、P19細胞は初代培養神経細胞と同程度の毒素感受性を示す ことがわかった。この毒素感受性と細胞表面のガングリオシドの局在との関係性を明らかにするため、細胞表面のガングリオシドGM1をコレラ毒素Bサブユ ニットを用いて、可視化観察した結果、細胞表面のガングリオシドはNeuro2a細胞よりもP19細胞、海馬神経細胞で多く発現していることがわかった。 以上のことから、本研究で見出したP19細胞は、高感受性ではあるが大量調製や手技の煩雑さといいう欠点を持っていた初代培養神経細胞に換わる、新たなボ ツリヌス毒素感受性細胞として、毒素作用解明にむけた基礎的研究の発展に貢献できるものと考えられる。

P-4 B型ボツリヌス菌由来ヘマグルチニンのX線結晶構造解析

◯阿松 翔 (京都工芸繊維大学大学院 工芸科学研究科 生体分子工学専攻 生物物理化学研究室)

【目的】
ボツリヌス菌(Clostridium botulinum) により産生される毒素は微量(1.0μg/人)で宿主に致死的な影響を与える世界最強の毒素である。中でもこの毒素複合体中に含まれるヘマグルチニンは赤 血球凝集や細胞接着、細胞内移入時などに重要な役割を担うことがわかっている。本研究では、特にヒトに対しての毒性が強いB型ボツリヌス菌由来のヘマグル チニン(BHA3)とシアリルラクトース(SL)の共結晶をX線構造解析することによりBHA3のレクチン活性の構造と機能の関係について考察する。

【方法】
5mg/ml Strep-BHA3(pH7.4,PBS)に対して基質の最終濃度がそれぞれ1.6mM 3’-SL /6-’SL(Tris-HCl pH7.5)となるように調整し共結晶化用溶液とした。種々の結晶化条件を検討し、蒸気拡散法を用いて295Kで結晶化を行った。得られた結晶に対し次の条件でX線回折実験を行った。[波長:λ=0.8Å,カメラ長:d=350mm,露光時間:exp=1.0sec,振動角:Δω=1.0°]

【結果】
PEG3350を沈殿剤とした場合に[14w/v% PEG3350/0.1M Bis-Tris pH7.0]の条件でBHA3-3’-SL/-6’-SLともに1weekで柱状結晶が得られた。本結晶を用いてSPring-8でX線回折実験を行った結果、この結晶はOrthorhombic(P222)に属しており3.2Å(3’-SL),2.8Å(6’-SL)の分解能でデータ測定を行うことができた。

【結論】
本実験により新しい晶系でより高分解能の回折データを測定することができた。電子密度を計算し解析した結果、糖鎖はTyr500とTyr501の残基に挟まれるように位置していることがわかったので、更に立体構造の精密化を行うことによりBHA3とSLとの詳細な相互作用を解明する予定である。

Clostridium perfringens enterotoxin断片を利用したclaudin指向性吸収促進技術の安全性評価

○土山遼、長瀬翔太郎、鈴木英彦、李相儒、山根誠司、渡利彰浩、近藤昌夫、八木清仁 (大阪大学大学院薬学研究科)

 これまでに当研究グループでは、Clostridium perfringens enterotoxin(CPE)の受容体がタイトジャンクション構成タンパク質claudin(CL)であることに着目し、CPEの受容体結合領域断片であるC-CPEを用いて、CLを標的としたバイオ医薬の非侵襲性投与法のproof of conceptを確立してきた。
 CL は肝臓、腎臓、肺などの各種臓器に発現していること、C-CPEはCPE由来であることから、C-CPEの非侵襲性投与技術としての応用に際してはC- CPEの安全性および抗原性を評価することが不可欠である。そこで本研究では、マウスを用いてC-CPE投与に伴う組織障害性および抗C-CPE抗体産生を解析した。
 C-CPEは200〜400 ?g/kgの投与でバイオ医薬の粘膜吸収促進作用を発揮する。そこで、C-CPE(1〜5 mg/kg)を週一回、11週間、静脈内もしくは経鼻投与し、肝障害および腎障害の生化学的解析を試みたところ、いずれの投与量でもALT、AST、 BUNの上昇は観察されなかった。抗C-CPE抗体の産生を解析したところ、少なくとも経鼻投与6週目より、血中に抗C-CPE抗体の産生が確認された。 非侵襲性投与法への応用では、頻回投与が不可避であることから、当該技術の実用化に際しては抗原性を回避した新規CL binderの創出が不可欠であると考えられた。そこで現在、druggable CL binder創製に向け、ペプチド、抗体、一本鎖抗体などの創製を進めている。