毒素シンポジウム
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第64回トキシンシンポジウム若手奨励演題

Y-1 NF-kappa B阻害剤DHMEQによるTiO2ナノ粒子に誘導される炎症反応の抑制

○宇梶珠未1、深津仁見1,2、及川佐枝子3、出岡淑4、市原佐保子4、梅澤一夫1、小出直樹1
1愛知医科大学医学部、2福友医学研究所、3椙山女学園大学生活科学部、4三重大学地域イノベーション推進機構

【背景】
 大気中の浮遊粒子状物質で粒径2.5 μm以下の微粒子であるPM2.5は呼吸器炎症疾患等を誘導すると考えられ、世界的に大きな問題になっている。近年、PM2.5に粒子径100 nm以下のナノサイズ粒子が多く含まれることがわかってきたが、その炎症誘導機構はわかっていない。一方、ナノ材料のうち、化粧品や食品添加物としても用いられる二酸化チタン(TiO2)ナノ粒子はサイズと不溶性からPM2.5のモデルになると考えられる。特に、粒径の50nmアナターゼ型TiO2のA50はマクロファージに強く炎症反応を誘導する。そこで今回、A50が誘導するマクロファージの炎症反応の阻害剤を探索し、その阻害機構について調べた。

【結果】
 ヒト急性単球性白血病THP-1細胞をPMAで分化誘導したマクロファージ様細胞を用いた。A50は炎症性サイトカインIL-1βの分泌を誘導した。IL-1βの発現はNF-κB依存であることから、NF-κB阻害剤DHMEQを添加したところ、A50 により誘導されるIL-1βの分泌を抑制した。A50はIL-1βのmRNA発現を変化させなかったがDHMEQは減少させた。さらにA50およびDHMEQのIL-1βの前駆体からの成熟化への影響を調べた。IL-1βはinflammasomeによってcaspase-1が活性化され、活性型caspase-1によって成熟化して分泌される。A50は活性型caspase-1を増やし、DHMEQは低下させた。さらにDHMEQはinflammasomeの構成タンパク質であるNLRP3の発現を減少させた。

【結論】
 TiO2処理マクロファージにおいて、DHMEQはIL-1βの発現と成熟化を阻害し、分泌を低下させた。そこでPM2.5によるマクロファージの炎症反応を抑えて、肺炎症疾患などの誘導を抑制する可能性がある。

Y-2 LRP5/6はヘビ毒ADAMとヒトADAMによって切断され、出血や細胞間の乖離を引き起こす

○瀬尾忠彦1、左近健人1、中澤志織1、西岡明日香1、渡邉孝平1、塩井成留実2、澤田均1、荒木聡彦1
1名古屋大学理学研究科生命理学専攻、2福岡大学理学部

 ヘビ毒ADAM(A Disintegrin And Metalloprotease)はヘビの毒によって誘導される出血の責任因子であると知られている。しかしながら、その標的と出血を誘導できるような切断部位は知られていない。本研究ではADAMの標的タンパク質を同定した。
 出血性ヘビ毒ADAMであるVAP1(vascular apoptosis-inducing protein-1)は細胞間接着を乖離させ、VE-cadherinとγ-カテニンの再配置を引き起こした。ここで、Low-densitylipoprotein receptor-related protein 5/6 (LRP5/6)はカテニンの再配置を引き起こすWnt受容体である事が知られており、部分欠失したLRP5/6はWntシグナル経路を常時活性化する事が知られている。そこで本研究ではVAP1がLRP5/6を切断することで、カテニンの再構成を誘導するかどうかを調べた。その結果、VAP1がLRP6の細胞外ドメインで限定的に効率よく切断する事、またLRP5も同じ切断部位で切断する事が発見された。この切断はシグナル伝達を阻害するβプロペラドメインを取り除き、LRP5/6を常時活性化する。LRP6の切断部位を含むペプチドに対する抗体は、培養細胞でVE-cadherinの再配置を阻害しただけでなく、細胞間接着の乖離を阻害し、さらにマウスでの出血を阻害した。これらの発見は出血性ヘビ毒耐性動物がVAP1切断部位や常時活性化型の形成に関わるlow-densitylipoprotein receptor domain class A(LDLa)ドメインが欠損したLRP5/6を持っている事と一致している。ヒトADAM8とADAM12もLRP6をVAP1と同様の位置で切断した。
 これらの結果はADAMによるLRP5/6の特異的な切断が、細胞間接着の乖離や出血を引き起こしている事、すなわちLRP5/6はADAMの生理学的な標的である事を示唆している。

Y-3 ヤエヤマサソリ毒液に含まれる殺虫性ペプチドLaIT3およびその関連ペプチドの構造決定

○十一浩典、宮下正弘、中川好秋、宮川恒
京大院農

 サソリの毒液中には様々な生理活性成分が存在し、それらのほとんどがペプチドである。我々は、日本に生息するヤエヤマサソリ (Liocheles australasiae) の毒液から、主に昆虫に対する毒性をもつペプチドの探索をおこなってきた。その結果、これまでに2種類の殺虫性ペプチド (LaIT1、LaIT2) を単離し、これらの一次構造を決定することに成功している。本研究においては、ヤエヤマサソリ毒液に含まれる新奇殺虫性ペプチド (LaIT3) を単離し、その一次構造の解析を行った。

 ヤエヤマサソリより毒液を繰り返し採取し、得られた毒液をRP-HPLCにより分画して、それぞれの画分の殺虫性を評価した。殺虫活性が認められた画分について、さらにRP-HPLCを用いた精製と活性評価を繰り返し、最終的に単一の殺虫性ペプチド(LaIT3)を得た。質量分析計による測定の結果、LaIT3は9189.6 Daの質量を持つことが分かった。さらに、ジスルフィド結合を還元・アルキル化した後、再度質量分析に供し、その質量差から3つのジスルフィド結合を含むことを明らかにした。続いて、このペプチドをエドマン分解法による配列解析に供し、N末端から46残基目までの一次構造を決定した。未決定部分の配列を決定するため、ペプチドをLys-Cあるいはchymotrypsinを用いて断片化し、得られた断片ペプチドの配列をMS/MS分析によるde novoシーケンシング法を用いて決定した。以上の結果から、LaIT3は84残基のアミノ酸で構成されること、また含まれる3つのジスルフィド結合はすべてC末端領域に局在していることが分かった。類似性検索の結果、LaIT3は他の抗菌性ペプチドと類似していたことから抗菌活性試験を行ったところ、大腸菌に対して顕著な活性を示すことが分かった。また、ヤエヤマサソリ毒液中に含まれるペプチドの網羅的な質量情報から、LaIT3の関連ペプチドが毒液中に含まれることが示唆された。そこで、それらについて構造解析を進めたところ、LaIT3のC末端領域に相当するペプチドであることが明らかになった。LaIT3およびその関連ペプチドの殺虫活性や抗菌活性について詳細を明らかにすることで、その毒液内での役割が明らかになると考えられる。

Y-5 Campylobacter hyointestinalisが産生する新規細胞膨化致死毒素 (CDT)の毒性解析

○畑中律敏、亀井数正、Srinuan Somroop、Sharda Prasad Awasthi、日根野谷淳、山ア伸二
大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科

 細胞膨化致死毒素(CDT)は3つのサブユニット(CdtA, CdtB, CdtC)で構成されるAB毒素であり、標的細胞の細胞周期の停止(G2/M arrest)および膨化を引き起こす。我々はC.hyointestinalisが産生する3種類のCDT(CDT-I, II, III)の内、CDT-IIIはCHO細胞に膨化を引き起こす、Vero細胞に対してG2/M arrestなしに細胞膨化を引き起こすという点で、残りのCDTとは異なる性状を示した。本研究では、CDT-IIIとCDT-IIとの比較解析を行うことで、これらの原因について考察した。
 @CDT-IIIが他のCDTと異なる生物活性の発現を担っているサブユニットを同定するためにCDT-IIIとCDT-IIの各サブユニットを入れ換えたキメラ毒素を作製した。CDT-IIIとCDT-IIIのAサブユニットをIIAに置き換えたキメラ毒素のみがCHO細胞に細胞膨化作用を示し他のキメラ毒素は細胞膨化を引き起こさなかった。以上のことより、細胞指向性の違いを担っているのはCdt-IIICサブユニットであると考えられた。
 AVero細胞内におけるCdt-IIIBおよびCdt-IIBの細胞内動態を観察するために免疫蛍光染色を行った。Cdt-IIBは核周辺に集積している像が観察されたが、Cdt-IIIBは細胞内に散見された。また、逆行性輸送経路阻害剤Brefeldin A存在下にてCDT-IIまたはCDT-IIIにて処理したVero細胞を培養するとCDT-IIによる細胞の膨化は阻害されたが、CDT-IIIによる細胞の膨化は阻害されなかった。以上のことより、CDT-IIIはCDT-IIとは異なる細胞内経路を介して細胞膨化を引き起こしていると考えられた。

Y-6 Shiga toxinによるアミロイドβ産生抑制効果の検討

◯佐藤和佳1)、高橋美帆1)、濱端崇2)、舟本聡1)、西川喜代孝1)
1)同志社大学大学院生命医科学研究科 2)国立国際医療研究センター研究所感染症制御研究部

 志賀毒素(Shiga toxin)は、O157:H7に代表される腸管出血性大腸菌(EHEC)が産生する主要な病原因子である。Stxは、Stx1とStx2の2つのファミリーから構成され、そのBサブユニットを介し細胞膜のラフト上にある糖脂質Gb3に結合しエンドサイトーシスによって細胞内小胞へ取り込まれる。その後、ゴルジ体から小胞体へ逆行輸送され、毒素活性を担うAサブユニットのみが細胞質へ移行し毒性を発揮する。
 一方で、アルツハイマー病の病原因子と考えられているamyloidβ-protein (アミロイドβ;Aβ)の前駆体、β-Amyloidprecursor protein (APP)は生体由来分子として逆行輸送経路をたどる数少ない分子の一つである。小胞体で生合成されたAPPはゴルジ体へ輸送され、一部のAPPは細胞膜へ順行輸送される。この細胞膜上のAPPはエンドサイトーシスにより再び細胞内に取り込まれ、ゴルジ体から小胞体へ逆行輸送される。さらに一部のAPPはリサイクリングエンドソームを介して細胞膜、あるいはエンドソームからリソソームへと輸送される。この一連の輸送過程でAPPはβ及びγセクレターゼによる切断を受けAβが産生され、Aβは細胞外へ放出される。
 本研究では、APPがStxと共通した逆行輸送機構を有する点に注目し、StxによるAPPの細胞内輸送及びAβ産生量に対する効果を検討した。ここでは、Aサブユニットに変異を導入し無毒化したStx2変異体(mStx2)を使用した。APPを発現させたStx感受性CHO細胞(CHO 1D)に各濃度のmStx2を添加し、48時間培養後、細胞内APPと培養上清中のAβをウエスタンブロッティングにより測定した。その結果、濃度依存的に細胞内APPが有意に減少すること、培養上清中のAβも減少傾向にあることが明らかになった。いずれの濃度のmStx2存在下でもCHO 1D細胞の生存率、及び同時に導入したGFPの発現量には影響がないことから、Stx存在下では特異的にAPPの輸送異常が生じてAPP分解が亢進し、その結果Aβ産生量が低下したと考えられた。現在、APPとStxの細胞内局在を解析中であり、APPの分解亢進のメカニズムを明らかにする予定である。

Y-7 Is In vitro cholix toxin production level correlated with lethal activity in a mouse model?

○Awasthi Sharda Prasad, Atsushi Hinenoya, Shamim H. Zahid, Masahiro Asakura,Nityananda Chowdhury, Sucharit Basu Neogi, Shinji Yamasaki
大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科

 Jorgensen et al. (2008) reported the possible virulence factor in Vibrio cholerae known as cholix toxin (ChxA). It shares structural and functional identity with Pseudomonas aeruginosa exotoxin A(ExoA). We have extensively studied the genetic and biological diversities of ChxA (Awasthi et al. 2013). According to our findings, the chxA genes possess extensive genetic diversity which is also reflected in its biological activity. We have reported two ChxA variants (ChxA II and III) apart from the prototype ChxA I. The ChxA II and III possess highly diverse receptor binding and catalytic domains respectively in comparison to ChxA I. Purified recombinant ChxA variants have differential cytotoxicity patterns when analyzed against numerous cancerous cell lines.
 Till date no quantitative assay was developed to determine the amount of ChxA produced by V.cholerae strains and therefore the level of ChxA produced by V. cholerae was not precisely understood. We have developed a bead-enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA), to quantify ChxA and its variants. The assay was used for the in vitro quantification of the ChxA I and its variants produced by V. cholerae strains. This study revealed for the first time the varied expression levels of ChxA produced by V. cholerae strains and more than 85% of ChxA was expressed extracellularly. The V. cholerae isolate with higher ChxA expression could be used to further study the clinical significance of ChxA. We hypothesized that the high ChxA producer strains may have higher lethality potential than the low ChxA producer strains. Indeed, mouse lethality assay with high and low ChxA producing V. cholerae strains suggests the correlation between the ChxA expression level and the lethality potential of V. cholerae strains. In vivo mouse lethality assay with rChxA proved that ChxA was lethal to mice suggesting their toxicity potential.